見えないものを見えるように撮影するには?
写真とは?
写真は、物体からの光をとらえて映像として記録する技術です。一般的なカメラで手を写すと、表面の肌が写ります。これは、光が肌の表面で反射して、カメラがそれをとらえるからです。しかし、光はすべてが肌の表面で反射するわけではありません。「手のひらを太陽に」の歌詞の通り、光に手をかざすと手が赤く見えるのは、光の一部が手の内部に入り込んでいるからです。
内部の光をとらえる
それでは、内部に入り込んだ光をカメラでとらえることはできないでしょうか。手に光を当てると、当てた部分だけでなく、その周囲もぼんやりと赤く見えます。これは、肌の内部で光が乱反射して、入った場所とは別の場所から出てくるからです。そこで、光がずれて出てくる特性を利用して内部に入った光だけをとらえる撮影技術が開発されました。光源としては、レーザー走査方式のプロジェクタを使います。このプロジェクタは映像全体を一度に映さずに、細い帯状に分割した1段ずつを高速で投影するものです。その光を、やはり1段ごとにしか撮影できないローリングシャッター方式のカメラでとらえます。対象物に光を順に当てながら、角度がついた反射光をカメラで受け取ることで、内部から出てきた光を選択してとらえることができるのです。
性能の低い機器でも
この装置で肌を撮影すると、肌の内部の血管の様子を写せます。また、シチューなど中の見えにくい食品に混入した金属片などを映し出すのにも使えます。同様に内部を見る装置であるX線検査装置が人体に害のある放射線を利用しているのに対して、この装置は無害な光で映し出すので安全です。さらに、光を選択することで、濃霧の中でも周囲が鮮明に見えて、牛乳と液体せっけんなど、見た目が同じ白い液体を光の透け具合で高精度に分類できます。
この装置に使ったプロジェクタとカメラは、本来の用途としてはどちらも性能は低く、安価な機器です。しかし、使い方を工夫することで、社会の役に立つ機能を発揮する装置として使用できるのです。
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先生情報 / 大学情報
千葉大学 情報・データサイエンス学部 情報・データサイエンス学科 准教授 久保 尋之 先生
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