誰でも旅行を楽しみたい! ユニバーサルツーリズムの可能性
誰もが持っている旅行する権利
もし目や耳が不自由になったら、両足が不自由になったら、あなたの休日に旅行という選択肢はありますか? 病気や障がいの有無にかかわらず、誰もが参加できる旅行を「ユニバーサルツーリズム」と呼びます。日本では、その言葉でさえ耳にすることが少ないかもしれません。それは観光施設のユニバーサルデザイン化が進んでいないだけでなく、病気や障がいのある人は旅行ができなくても仕方がないという社会意識も残っているからでしょう。しかし、欧米ではすでに旅行をするのは権利として当たり前と考えられています。
ユニバーサルツーリズムの経済効果
経済的な観点からもユニバーサルツーリズムは重要です。病気や障がいのある人が旅行をする場合、介助者も同行することが多いために、1回の旅行に使う金額は健常者よりも多くなります。そのため、海外ではユニバーサルツーリズムへの投資効果は高いと評価されています。例えば東京の場合では、年間300億円程度の経済効果があると試算されました。
日本に受け入れ体制がなければ、海外からの観光客を逃しかねません。国際的な会議や学会などのイベントは、開催地域への経済効果が高いために各地で招致活動が盛んに行われています。欧米では家族が同行するケースも多く、多様で多数の人が集まるために、ユニバーサルツーリズムへの対応の良しあしが、開催地の選考を左右するかもしれません。
これからの観光の活路として
ユニバーサルツーリズムで大切なのは、すべての人が一緒に楽しめるような経験を提供することです。例えば海外には、スロープに鍵盤の絵を描いて通るたびに音階が鳴るようしたところ、車いすの人も子どもも一緒に楽しめる人気スポットになりました。点字のアートは、健常者に新鮮な体験として訴えかける作品になっています。
コロナ禍により観光そのものが変わりつつある今、病気や障がいのある人だけでなく、健常者にも新しい体験となるユニバーサルツーリズムは、これからの観光のひとつの活路になるはずです。
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金沢大学 融合学域 観光デザイン学類 教授 堤 敦朗 先生
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