魚のストレス状態を正確に測るには?
魚はほんの少しのストレスも大敵
魚はストレスに弱い生き物です。例えば、何らかの影響で水中に化学物質が入り込んでしまった場合、それがストレス要因になることは容易に想像がつくでしょう。しかし、自分より強い魚に追いかけられたり、ほんの少し水温が変化したりするだけでもストレスを受けます。ストレスにさらされ続けた魚は、成育が悪くなるほか、最悪の場合は死んでしまうこともあります。魚を扱う水族館や養殖業では、なるべく魚にストレスを与えないような丁寧な管理が求められています。
魚のストレス状態をどうやって正確に測るか
これまで、魚のストレス状態を調べる方法は、ストレスがかかると増加するグルコースの量を血液採取で調べる方法しかありませんでした。この方法では、魚が周囲の環境から受ける複雑な影響を正確に読み取ることは難しく、本当はストレスを受けているのに「ストレスはない」と判定されてしまうこともありました。そこで現在、研究が進んでいるのが、バイオセンサと加速度センサを組み合わせたハイブリッド式の測定方法です。魚の体にハイブリッドセンサシステムを付けてグルコースの量の増減を測定しながら、加速度センサによる魚の動きを回転や速度まで含めてモニタリングできます。そのため、静かにしていて一見するとストレスがないように見える魚が、実は大きなストレスを受けていたという状態も発見しやすくなりました。
研究の実用化で訪れる未来とは?
この研究は、水族館や養殖業での実用化まであと一歩の段階まで来ています。今後実用化ができれば、魚の健康診断を定期的に行い、より良い環境で魚を飼育・養殖できるようになるはずです。また、センサを動かす電池とデータをシステムに送る通信の問題を解決できれば、センサで測定する項目は必要に応じて変えることができるため、いずれは海洋生物の生態調査にも使えるようになります。研究が進むことで、ウナギや深海生物など、まだ詳しくわかっていない生態の全貌が見える日が来るかもしれないのです。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 准教授 呉 海云 先生
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