大学生の「生活を支える」支援とはどういうことか

大学生の生活上の困難とは
大学生は悩みを抱えやすい年代です。ただし、それがすべて「こころの問題」で「考え方を変えればよい」というわけではありません。「やる気がでない」という訴えの背景にある心身の状態や発達上の課題、家族関係等におけるさまざまな脅威や経済状況等、幅広い視点で検討し、状況に即した支援を考える必要があります。
小学校や中学校、高校においては、担任や養護教諭らが対応したり、スクールカウンセラーによる心理的なケア体制を整えたりしてきました。しかし義務教育年代でもなく未成年でもない大学生に対しては、十分な支援制度が整っているわけではありません。
問題を明らかにする
精神保健福祉の分野では、メンタルヘルスの問題に対して医学的治療に限らず幅広い視点で検討を重ねます。症状がなくなることだけではなく、生活の質や満足度を高めることを重視したり、身体や脳機能以外の視点でメンタルヘルス悪化につながる背景を探索する等、その人の暮らし全体を見据えて支援するのです。
例えば「学生生活の意欲がなくなった」と訴える学生の状況を詳しく聴くと、親の失業をきっかけにアルバイトを増やして消耗していることがわかったとします。そういうときは心理ケアだけではなく奨学金や生活資金の工面についても話し合うことが必要です。このような生活全体を見据えた多面的な支援を行う人のことを「キャンパスソーシャルワーカー」と言います。
より良い支援方法を求めて
「悩み」=心の悩み、と狭く考えられやすい社会のなかで、大学生が自身の困りごとを相談するのはなかなか容易ではありません。大学生が落ち着いて学生生活を送ることができるようにどのような支援が必要なのか、どのように環境を調整してどのような資源と結び付ければよいのか、より多角的な観点から研究を重ねていくとともに、キャンパスソーシャルワーカーによる実践の質を充実させていく取り組みが、今後もさらに必要とされることでしょう。
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先生情報 / 大学情報

東海大学健康学部 健康マネジメント学科 准教授長沼 洋一 先生
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