筋ジストロフィーの原因解明に、熱帯魚が大活躍?
いまだに謎の多い難病、筋ジストロフィー
筋ジストロフィーは、遺伝子の異常が原因で筋肉の細胞が壊死していく病気です。全身の筋肉が壊れやすく、再生が追いつかない状態になり、次第に筋力が低下していってしまう難病です。
筋ジストロフィーには、原因となる遺伝子の種類によってさまざまな症状があり、その総数は約50種類に上ります。しかし、有効な治療薬がほとんどありません。また、現時点では原因となる遺伝子すら見つかっていない筋ジストロフィーも存在します。いまだに謎の多い筋ジストロフィーの実態を解明すべく、各国で研究が続けられています。
ゼブラフィッシュを用いた遺伝子実験
筋ジストロフィーの研究で患者の筋肉を採取することはできないので、多くの場合、動物実験による研究が行われています。中でも、ゼブラフィッシュという魚を用いる実験方法が注目されています。ゼブラフィッシュは、メダカくらいの大きさの熱帯魚です。たくさんの卵を産んで繁殖するため、マウス(ネズミ)の10倍もの効率で増やすことができます。マウスの卵子に比べると、ゼブラフィッシュの卵は大きいため、DNAを注入するなどして遺伝子を改変する操作も比較的簡単です。また、ゼブラフィッシュは子どもの頃は体が透明なので、筋肉が発光するような操作を加えることで、その筋肉が弱っているかどうかを観察しやすいというメリットもあります。
期待される筋ジストロフィーの原因解明
こうした研究によって、筋ジストロフィーの症状の原因となる遺伝子変異が特定できれば、そこにアプローチできる薬の開発や遺伝子治療の検討にも結びつけることができます。最近、治療薬が開発されたデュシェンヌ型という種類の筋ジストロフィーは、その原因遺伝子が特定されてから治療薬ができるまで約30年の歳月がかかりました。このゼブラフィッシュを用いた研究手法が、ほかの種類の筋ジストロフィーの症状の原因解明と治療法の確立につながることが期待されています。
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東海大学 工学部 生物工学科 准教授 三橋 弘明 先生
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