これで君も明日から哲学者? AIが変える研究・教育のあり方

哲学は大変?
私たちの考え方や価値観は、西洋古典哲学がルーツになっていることが少なくありません。ソクラテスやプラトンをはじめとする哲学者が残した原典(一次史料)や、その研究書(二次史料)を読み込むことで、今も新しい発見が得られます。しかし、そのためにはギリシア語やラテン語を理解する語学力が必須です。また、文献を探すにも独特のやり方があり、それを習得するだけで多くの時間がかかります。そもそも史料は枕のような分厚い本も珍しくなく、哲学者であっても楽々と読みこなすことは困難です。
AIから哲学を教わる時代に
そんな哲学研究を助けてくれるのがAIの存在です。近年、生成AIが目覚ましい勢いで発展し、質問にすぐに答えてくれるAIチャットボットも身近になりました。この技術を応用した「ヒューマニテクスト」は、西洋古典哲学の大量の文献をデータ化して、AIに読み込ませた新しいAIプラットフォームです。
これは文献のデータ化や翻訳の部分を、西洋古典哲学の専門家が管理しています。生成AIといえば、もっともらしい誤りを吐き出す「ハルシネーション」が問題になっていますが、ヒューマニテクストにそのリスクはほとんどありません。例えば「古代ギリシアの人たちは、どんな仕組みで地震が起こると考えていた?」と聞けば、その答えを瞬時に、根拠になる史料の在りかとともに教えてくれるのです。
AIが教育を変える?
ヒューマニテクストを用いれば、高校生や大学生でも高いレベルの論文を格段に書きやすくなります。また、大教室での一斉講義にこうしたツールを用いれば、まるで学生一人一人に教員がつくように、一対一の哲学問答を同時に実施することも可能になります。さらに、医療など哲学以外の教育にも、活用できる余地は大いに見込めます。従来は研究者をはじめ、専門知識をもつ限られた人にしかできなかった哲学、あるいはほかの学問について学ぶハードルを下げ、「知を皆のものにする」上で、AIは頼もしい味方になってくれるのです。
参考資料
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桜美林大学リベラルアーツ学群 准教授田中 一孝 先生
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西洋古代哲学史、芸術思想史先生が目指すSDGs
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