交配をより効率的かつ厳密にした最新の遺伝子研究
交配には手間と時間がかかる
卵をたくさん産む鶏は、突然変異で生まれたそのような性質をもつ鶏同士を交配させることで数を増やします。ところが、思惑どおりにいかない場合もあります。その時は、最初から掛け合わせをやり直さなければなりません。このような生物を遺伝的に改良することを「育種」と言いますが、やってみなければわからない、手間と時間がかかる効率の悪い作業だったのです。
遺伝子研究が進む中で、効率的な交配が可能に
しかし、遺伝子研究が進む中、生物の個体差を調べることによって遺伝的な類縁関係がわかってきました。この類縁関係を遺伝情報として表示できるため、その都度最初からやり直すという非効率的な交配を行う必要がなくなりました。また、交配の結果を予測できます。交配で心配なのは、「連鎖」の問題ですが、これも一挙に解決できます。よい性質を遺伝的にもたせると、病気になりやすいなど同時にマイナスの性質を受け継ぐ場合があります。遺伝子を解析することで、そのようなマイナス情報を含めた遺伝情報が蓄積されるため、より安全な交配だけに絞り込むことができるようになったのです。
数学とコンピュータの力で、遺伝の仕組みを解明
しかし、交配の全体像が解明されているわけではありません。というのも、生物の遺伝の仕組みは複雑だからです。特に、卵をたくさん産むといった量的な性質は、「羽根の色が白」というような定性的な性質と違って、複数の遺伝子が関与しています。それがどの遺伝子でどの程度の数なのか、また互いにどのような関係にあるのかを知ることは簡単ではありません。膨大な組み合わせがあるため、まず強い性質を優先させ、解析には数学とコンピュータの力を借りなければならないのです。この学問分野は「バイオインフォマティクス(生物情報科学)」と言いますが、この方法を駆使して、今多くの研究者が遺伝の仕組みの解明に取り組んでいます。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 生物生産学部 生物生産学科 教授 西堀 正英 先生
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