生物学で考える、水産資源の価値最大化

生物学で考える、水産資源の価値最大化

水産資源の価値を最大化

水産資源の有効な利用方法を、生物学の観点から提案しようという試みがあります。水産資源の利用については経済学の分野でも研究されていますが、それぞれ視点が異なります。例えば水産経済の分野では、商品全体の流通から消費までを総合的に考えます。一方で生物の研究者は、魚1個体ごとの特徴が気になってしまいます。生物と経済の双方の観点を取り入れれば、魚種や個体の特徴を考慮しながら、水産資源の価値が最大化するような漁業や流通を行えるかもしれません。

大きさと価格の関係

魚に高値がつく条件を探ろうと、市場で調査が行われています。その結果、「ちょうどいい大きさ」で獲られた魚は、1kgあたりの価格が高いことがわかってきました。価値が高くなる大きさは魚の種類によって異なりますが、多くの魚は成長すると重量が増え、脂が乗って味がよくなる、刺身や切り身に加工しやすくなるなどの利点が生まれます。そのためある程度大きく育つまで待ってから漁獲したほうが、漁業者の収入向上や、水産資源の有効利用につながるのです。
「ちょうどいい大きさ」になる時期を見つけるには、魚の生活史を考慮する必要があります。例えばクロマグロのように、産卵期の終わり頃では脂が乗りにくく価格が下がる魚もいるからです。成長速度や寿命、産卵時期などを踏まえて獲るべき時期を提案しようと、生物学的視点からの研究が続いています。

獲る前の判断が重要

水産資源を守るためにも、魚を獲る前に「この個体はちょうどいい大きさかどうか」を判断することが理想です。目的ではない魚を傷つけずに済むからです。例えば沖縄の電灯潜り漁では、人が海に潜って魚を1個体ずつ目で見て、獲るか獲らないかを判断しています。しかし本州では網を使って魚をまとめて獲る方法が主流です。目的以外の魚や小さな個体をどうやったら生かしたまま逃がすことができるのか、漁法の違いによる課題をどうしたら解決できるのか、さらなる研究が必要です。

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岩手大学 農学部 食料生産環境学科 教授 下瀬 環 先生

岩手大学 農学部 食料生産環境学科 教授 下瀬 環 先生

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水産資源学、資源生態学

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メッセージ

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