コロナ禍の影響で「離婚」や「中絶」は本当に増えた?
コロナ禍によるライフスタイルの変化
2020年からの新型コロナ感染の世界的な流行は、ライフスタイルに大きな変化をもたらしました。感染予防のためにマスクの着用や手指の頻繁な消毒が推奨され、人との接触を減らすために、大人数での会食などさまざまな集まりが制限されました。学校ではリモート授業、会社ではリモートワークが大幅に増加しました。人と人の対面は少なくなり、ステイホームの時間が長くなりました。
実は仲がよくなった夫婦のほうが多い
そうしたライフスタイルの急激な変化の中で、夫婦間で不和が生じたための「コロナ離婚」の危機や、あるいは、学校が休みになって行き場がない生活をしていることで、望まない妊娠に至った女子生徒たちが増え、妊娠中絶の相談件数も増加しているとの報告が、メディアで報道されました。しかし調査によると、同居するカップルについては、リモートワークのため一緒に過ごす時間が長くなり、コロナ禍でのいろいろな困難に対し、協力して乗り切る機会が増えて、関係性がよくなった場合が多いとわかりました。関係性が悪化したのは、ごく一部の夫婦に限られました。妊娠中絶の件数も、公的統計によると、2020年はむしろ顕著に減少していました。日本のメディアは、セクシュアリティやカップルの関係については、離婚とか中絶とか、悪い話を報道して危機感をかきたてる傾向にあり、逆に、支えになるような情報は提供しないということもわかります。
新たな出会いの機会の減少
ステイホームの時間の増加は、夫婦や家族の関係性をよりよくした場合が多いとわかりました。しかし、他人との接触機会の減少は、友人や恋人を作るための新しい出会いの機会を奪ったのも事実です。対面での出会いとコミュニケーションは、人間にとってなくてはならないものです。特に若い人たちは、その機会を奪われて、大人以上に精神的なダメージを被っている場合があります。コロナの収束後は、このダメージからの回復のため、社会での対策が必要になるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
明治大学 文学部 心理社会学科 現代社会学専攻 教授 平山 満紀 先生
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