社会と経済を支える「家計」について考える
家計管理とライフプランニング
経済の循環をもたらす3つの経済主体が、家計、企業、政府です。生活経済学では、家計を中心として企業や政府との経済活動を理解していきます。家計収支や消費・貯蓄行動は、そのときどきの社会や経済の動向によって大きく変動します。不安定な社会情勢のなかでは、さまざまな生活問題やリスクに直面することを予想しながら、長期的な視点で家計管理とライフプランニングをたてていくことがますます必要になってきます。
家族の多様化と家計問題
家計は、「世帯」という単位で把握されますが、現代の日本ではその世帯を構成する家族のあり方が多様化しています。例えば、離婚の増加など、世帯構成そのものが変化することも想定して、家計行動を理解する必要性が高まっています。離婚世帯の約8割は母親が親権をもつ「ひとり親世帯」になります。父親からの養育費が不払いになって、母親が家計をすべて負担するケースがみられます。母子世帯の平均収入はそうでない世帯の約3分の1となっていて、離婚によって教育の機会や生活のゆとりを失う子どももいるのです。現在、年間約21万人の子どもたちが親の離婚を経験しています。
変わるべき制度と価値観
母子世帯の家計負担は「子どもの貧困」として社会問題化しています。政府はさまざまな対策や支援を行っていますが、そもそもなぜ親の離婚が子どもの貧困を引き起こすのか考えてみることも重要です。離婚後に母親がひとりで家計負担を背負わざるをえなくなるのは、日本の離婚制度が単独親権を採用していることとも関係します。また、子育てに必要な養育費や教育費が、諸外国に比べて政府による公的負担よりも、家計による私的負担の割合が高いからでもあります。子どもの幸せと権利を守るためには、多様化する家族のあり方に合わせて、法制度や価値観をアップデートすることが欠かせません。具体的な家計問題の背景を探り、解決に向けた法制度・政策のあり方を学ぶことは、今後のライフプランニングにも役立ちます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
大阪産業大学 経済学部 国際経済学科 准教授 菊地 真理 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
生活経済学、生活科学、家族社会学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?