100歳過ぎても若々しい細胞を維持できる!?
重要だけど危険な存在
「活性酸素」と聞くと、なんだか体に悪そうなイメージがあるでしょう。私たちは空気中の酸素を吸収して生きており、そのうちの数%は活性酸素に変化します。活性酸素は、細胞間のシグナル伝達や免疫機能の発現など、重要な役割を担っていますが、過剰に生産されたり細胞内でうまく活用できなかったりすると、細胞を傷つける危険な存在になるのです。正確には、活性酸素によって細胞内の染色体が断裂するなど、ダメージを受けることがあるのです。そのため生体内には、細胞を守るためのさまざまな機能が備わっています。
活性酸素を無害化するメカニズム
傷口にオキシドールを塗ると、白っぽい泡が出てきます。オキシドールは、傷口を殺菌するために精製された活性酸素(過酸化水素)の溶液ですが、これに対し体内のカタラーゼという酵素が、細胞を守るために活性酸素を酸素と水に分解しているのです。同時に生体内には、断裂した染色体を修復して細胞を守ろうとするメカニズムも備わっています。その1つがDNA組み換えを促進する酵素で、大腸菌のような単細胞生物は、多細胞生物よりも強力な修復メカニズムを持っていると考えられています。
細胞死するかどうかを決める
細胞を守るさまざまな機能があるのに、死んでしまう細胞があります。その鍵になるのも、やはり活性酸素です。染色体が複製したり、壊れた染色体が修復されたりする場合。また細胞内ではエネルギーを使った反応が起きていますが、その反応が正常に終了しなかった場合、さまざまなケースで使い切れなかったエネルギーによって活性酸素が生まれ、細胞の活性酸素の自爆スイッチが入ってしまうのです。
どんなタイミングで活性酸素が発生し、体内でどのように対象と反応するのか、最新の研究でも詳しくはわかっていません。しかし、研究が進んで活性酸素を上手に制御する技術が開発されれば、いつまでも錆(さ)びない細胞を維持して、ヒトの最大寿命といわれている120歳くらいまで、元気に過ごせるようになるかもしれませんね。
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東海大学 生物学部 生物学科 准教授 海藤 晃弘 先生
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