強力なレーザーを再生可能エネルギーから生み出せ!

太陽光からレーザーを生み出す
レーザーは、医療や通信、精密加工など、現代の社会に欠かせない技術です。持続可能な社会の実現には、レーザーを太陽光などの再生可能エネルギーから生み出すことが望まれます。太陽光を利用したレーザーの原理は1960年代には知られていました。しかし、鏡やレンズを使って太陽光を一点に集めるために太陽の動きを常に追跡する必要があり、これが実用化の大きな障壁となっていました。
太陽を追わずにレーザーを発振
この課題を解決するために、光ファイバーを布のように平面状に配置して、太陽光を効率的に取り込むことでレーザーを発振する「完全平板型太陽光励起レーザー」が開発されました。この技術では、ネオジム原子を含む光ファイバー自体が発振媒質となり、光ファイバーの両端に設置された鏡で光を共振させる仕組みです。現在はまだ効率面で課題があるものの、量子ドット技術との組み合わせで効率向上をめざし、研究が進められています。
この技術は幅広い応用が考えられます。例えば、レーザーを使って水素を生成し、脱炭素社会に向けたエネルギー開発に貢献する可能性があります。また、装置の構造がシンプルで長期間の運用が可能であることから、宇宙空間に設置して太陽光のエネルギーをレーザーの形で地上へ送ることで、天候に左右されない安定した電力供給が可能になります。
スペースデブリを狙い撃ち
レーザーの励起媒質は主に固体が使用されていますが、気体を用いることでさらなる可能性が広がります。気体媒質は固体と比較して10倍以上の出力を実現できるという大きな利点があります。この分野で特に注目を集めているのが「アルカリガスレーザー」です。アルカリ金属は約100℃で気化しますが、この気体に励起用のレーザーを照射することで非常に強力なレーザー光を生成できます。この技術が実用化されれば、地上からスペースデブリを撃って効率的に除去することも可能になると期待されています。
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東海大学理学部 物理学科 教授遠藤 雅守 先生
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