スポーツ科学は役に立つ! スキージャンプを例に考える
より遠くへ飛ぶために
スキージャンプ競技では、スキー板をV字に開いて飛ぶのが主流となっていますが、最初からこの姿勢だったわけではありません。より遠くに飛ぶ研究を重ねた結果、1990年代にV字ジャンプが定着しました。その空中姿勢を研究するために行われるのが、人工的に気流を作って空気抵抗を測定する「風洞実験」です。日本でも国立スポーツ科学センターでできるようになりました。こうした実験などで得られるさまざまな数値に基づいて、選手をサポートしていくのが「スポーツ科学」です。
ルールの範囲内で工夫
スキーは用具をたくさん使うスポーツです。用具の進歩とともにルールは変わります。例えばジャンプスーツは、ムササビのように股下を下げると飛距離が伸びますが、やり過ぎると規定違反になります。ルールの範囲内でいかに工夫して成果を出すかがスポーツ科学の腕の見せ所です。風洞実験ではスーツの素材研究もしています。スーツの生産年や色によって空気の通し方が異なっており、スーツが変わると最適なフォームも変わるため、研究は常に現在進行形です。
専門家集団がスポーツを支える
また、ジャンプ台で音を収集し、飛距離が出る飛行かどうかを聞き分ける研究も始まっています。優秀なコーチの感覚を、データとして可視化する試みです。タブレット端末を活用してジャンプ直後の選手に映像を届ける仕組みづくりや、センサを付けてジャンプし、流体解析をして効果的な姿勢を探る取り組みも今後進むでしょう。
最終的に技術を突き詰めるのは選手ですが、工夫するきっかけや知識を提供し、選手のために役立てていくことがスポーツ科学の役目です。スポーツ科学は生理学や医学、心理学など多くの専門分野の集まりです。スポーツの世界では、複数の専門家が1人の選手をサポートするマルチサポート体制に移りつつあり、多様な人材が求められています。スポーツ科学はいろいろな入り口から関わることができる学問なのです。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 国際文化学部 地域創造学科 教授 森 敏 先生
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