スポーツにおける「リズム」の正体とは何か?
リズムは他者に伝搬する
スポーツでは「リズム感が良い」「独特のリズムで相手を抜き去る」といった表現が用いられます。しかし、この「リズム」を正確に答えられる人は多くありません。このメカニズムを明らかにすべく、運動学の分野ではリズムの正体に迫るとともに、このリズムが「他者に伝搬する」ことを証明する研究が行われています。
視覚で取り入れ、リズムに変換する
運動を学ぶ時、人は視覚でフォーム全体を認識します。例えば野球のバッティングでは、グリップやバットのヘッドの高さなどの細部ではなく、運動の始まりから終わりまでの「時間フレーム」と、その中でどんな動きをするのかを理解しようとします。そして動き全体の時間フレームを、テイクバック、スイング、フォロースルーなどのセグメントに分けてモーションを構築しますが、このセグメント分けされた動きこそがリズムと言われるものです。実際の試合では動体視力など複合的な能力も影響しますが、多くのヒットを生む打者は、このセグメントを調整して投手のリズムに合わせる能力が高い選手とも言えるでしょう。
また、サッカーやバスケットボールなどでドリブルの際に、攻撃側はボールに触るリズムを一定にして相手をそのリズムに同調させて、その後急激にテンポを上げることで守備者が対応できない状態をつくることも可能です。このようにさまざまなスポーツにおいてリズムが密接に関わっており、時には勝敗をも左右する可能性が高いことがわかってきました。
特性を生かした普及、育成の動きも
リズムが他者に伝搬するという現象は、視覚から取り入れた動きをリズムとして習得することによって起こります。この特性を生かして、オリンピアンなどのトップレベルの選手から子どもたちまでを同じ場所で練習させて、その技をじかに、そして頻繁に見ることで上達させる取り組みを行う競技も出てきました。スポーツにおける競技力の向上には、目には見えないリズムが密接に関わっているのです。
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先生情報 / 大学情報
福山市立大学 教育学部 児童教育学科 教授 山西 正記 先生
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