スポーツ上達のために「ものの見方」や「考え」を探る
心理面からスポーツを探究
スポーツをするときに「何を見て、何を考えているのか」は、初心者、中級者、上級者で違います。その違いを解明できれば、初級者も効率よく技能を上達させることが可能になるでしょう。例えば、バスケットボール上級者が競技中に考えていることやそこから派生する動きなどを、初級者、中級者が理解し、まねしていけば、もっと上手にプレーすることができるようになるはずです。
このように、スポーツに心の面からアプローチして上達を図る、あるいはそのスポーツを長く楽しめるようにするのに役立つのがスポーツ心理学です。
複数ある「正解」の最大公約数を見つけ出す
スポーツ心理学を研究するにあたり、集団競技のほか、剣道など個人競技においても実験が行われています。剣道であれば、実力の異なる競技者2人に対峙してもらい、機器を用いて視点などを記録します。その結果、初心者は相手の顔部分に両眼の視線を交差させて注視するのに対し、上級者は両眼の視線を相手の後方で交差させて全体像を見ていることが判明しました。部分ではなく全体を見ることで相手の動きに対する反応が早くなり、上級者は経験と知識から5手、6手先の攻撃までを予測して自分の次の動きにつなげているようなのです。
ただ初心者にとって難しいのは、先を読む思考について上級者に尋ねると、人により答えが異なることです。そこで多くの上級者に実験に参加してもらい、その思考の最大公約数的なものを見つけていこうという研究が進んでいます。
楽しさが見つかれば継続していける
競技者のゲーム場面の見方、保持している知識、これらを踏まえた状況判断に関する研究を実施することは、スポーツ振興にもつなげていけると考えられます。「やっていると楽しくて、続けたくなる」という感覚は、スポーツ以外の分野でも言えることです。そうやって得た充実感、周囲との連帯感などは、あらゆる意味での協働が進む社会の舞台でも役に立つものだと期待できます。
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先生情報 / 大学情報
広島文教大学 人間科学部 心理学科 教授 田村 進 先生
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