地域を丸ごと健康に! ~地域包括ケアシステムの課題~
地域全体で医療を担う
医療の問題は、今や地域全体で取り組まなければならない問題となっています。かつては病院で手術・入院をし、その結果、病気が治るか残念ながら亡くなるかのどちらかでした。しかし医学の進歩により、医療を提供する事業体が、病院だけでは成り立たなくなってきています。
糖尿病など、慢性的で在宅での医療が必要な病気や、認知症などの福祉による介護が必要な病気などが増えてきたからです。これらの変化に対応するためには、地域が一体となって医療という仕組みを回し、国民一人ひとりを健康にする仕組みをつくりあげることが必要です。その仕組みを「地域包括ケアシステム」といいます。
地域の問題を深く考えた健康づくり
地域包括ケアシステムは、地域全体がひとつの事業体のように機能する必要があります。地域には歴史や文化があり、それらを踏まえた仕組みとすることが重要です。例えば、統計的に県民が短命とされる県があるとします。その原因は、飲酒量の多さや喫煙率の高さにありそうです。しかし、最も根本的な要因は、それらを改善するための意識があまり高くないことであることがわかってきました。こうした生活習慣や価値観は長い歴史のなかで育まれてきたものなので、簡単に変えることはできません。健康に対する考え方を改めてもらうために、子どもの頃からの健康指導など、長い時間をかけた施策が有効かもしれません。
地域に根づかせるための工夫
そこで特に必要なのが、地域のステークホルダが一丸となって課題に取り組むことです。市民一人ひとりに、国や自治体、さらには民間企業などの産業体をも巻きこむことが必要なのです。特に、金融機関を巻きこむことは欠かせません。国や自治体の補助金頼みでは、補助金が尽きてしまったときにその事業が終わってしまいますが、金融機関が関与することで資金の循環が生まれ、その地域に根づいていくからです。地域に生きるステークホルダの利害を整合化させつつ、地域産業と一体となって課題に取り組むこと、つまり地域経営の発想が肝要なのです。
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先生情報 / 大学情報
新潟大学 創生学部 准教授 堀籠 崇 先生
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