興味がつきない「ブラックホール」の不思議
ブラックホールは「穴」ではない
宇宙にはすさまじい重力で周囲のものを引き付ける天体があります。「ブラックホール(黒い穴)」と呼ばれていますが、穴ではありません。光も吸い込んでしまうため、存在は目には見えませんが、ガスがブラックホールのまわりを回りながら、「角運動量保存の法則」に従って、平たい円盤状(降着円盤)になり、ガス同士の摩擦によって落ち込んでいく様子はX線によってとらえられます。ガスはブラックホールに近づくほど大きなエネルギーを獲得して高温となり、X線を放射するからです。
ブラックホールの大きさの謎
重い星が死を迎え「超新星爆発」を起こすと、中心にブラックホールが誕生することがあります。これは「恒星質量ブラックホール」と呼ばれ、太陽の10倍から数十倍ほどの質量です。また、銀河の中心には太陽の10万倍から数十億倍の質量を持つ巨大な「超大質量ブラックホール」が存在することもわかっていますが、どうやって形成されたかは確証が得られていません。
一方で、太陽の数十倍から数万倍の大きさを持つ「中間質量ブラックホール」は長年、見つかっていませんでしたが、近年候補となる天体が発見され、超大質量ブラックホール形成の謎を解き明かすカギになるのではと研究が進められています。
物理の法則で宇宙の不思議に挑む
最近の研究で、2つの巨大なブラックホールが連星になっている事例もわかってきました。2016年2月、アメリカで初めて「重力波」と呼ばれる時空のゆがみが検出されましたが、これは13億光年のかなたで太陽の数十倍の質量を持つ2つのブラックホールが合体した衝撃が伝わったものと考えられています。
将来、重力波の探査が宇宙でもできるようになったり、X線で連星の運動にともなう周期変動を探索すれば、もっと多くのブラックホールの連星が見つかるかもしれません。ほかにも宇宙にはダークマター(暗黒物質)やダークエナジー(暗黒エネルギー)といった、解明すべき謎が多く残されていて、物理の法則を用いて理論的な予測が行われています。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 理学部 物理学科 准教授 江副 祐一郎 先生
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