生活に欠かせない「摩擦」~トライボロジーへの誘い~

生活に欠かせない「摩擦」~トライボロジーへの誘い~

古代から活用されてきた「摩擦」

潤滑や摩擦・摩耗・焼付きなど「摩擦を科学する」学問を「トライボロジー」といいます。古くから人類は摩擦を生活に取り入れてきました。石や木の摩擦から火をおこすというのも古代の人々が得た知恵です。文字を書く鉛筆、文字を消す消しゴム、物を固定するネジやクギなど、摩擦は身近なところで多く利用されています。

IT分野でも摩擦の技術が欠かせない

パソコンやデータサーバなどに使われるハードディスクにも摩擦のコントロール技術が貢献しています。ハードディスクは回転する磁気ディスクの上を「磁気ヘッド」が揺動運動することにより情報の読み書きをします。磁気ディスクを回転させるための「回転スピンドル」および磁気ヘッドを動かす「揺動回転軸」は「軸受」と呼ばれる機械要素により回転支持されています。ハードディスクをより高速かつ正確に動かすためには、これらの回転で発生する摩擦力をいかに小さくできるかがポイントです。
また磁気ディスクと磁気ヘッドの隙間が小さいほど、多くの情報が記録できます。小型のハードディスクにより大容量の情報を記録したいという要望から、ハードディスクの磁気ディスクと磁気ヘッドの隙間は年々小さくなり、現在では原子サイズオーダーまで小さくなっています。よって磁気ディスクと磁気ヘッドの間のしゅう動部における摩擦および潤滑特性がハードディスクの性能と耐久性を大きく左右します。

さまざまな摩擦をコントロール

機械システムに使用されている部品が摩耗することなく運転するためには、しゅう動部に生じる摩擦は小さいほうが良いと考えられます。一方で、自動車などのブレーキ装置などでは生じる摩擦力は大きいほうが良いとされる場合もあります。時と場合に応じて摩擦をコントロールすることが求められており、まさにこの「摩擦のコントロール」がトライボロジー研究の目的であり醍醐味であると言えるでしょう。トライボロジーの研究は多岐にわたるため、機械の知識のみならず、物理や数学、化学などの幅広い知識が要求されます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京海洋大学 海洋工学部 海洋電子機械工学科 准教授 藤野 俊和 先生

東京海洋大学 海洋工学部 海洋電子機械工学科 准教授 藤野 俊和 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

機械工学、トライボロジー、機械応用力学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の研究室では「元気・勇気があること、失敗を恐れないこと」をモットーとしています。良い研究には多くの失敗がつきものです。高校生のうちから失敗を恐れず、何事にも挑戦する姿勢を大切にしてください。そして、学問の基礎はきっちり身につけておくことをお勧めします。
大きなチャレンジも大切ですが、それと同じぐらい、基礎的な学力の積み重ねもとても重要です。高校生のあなたにできることは、毎日の授業をしっかり受けることです。日々の学習の積み重ねが将来の研究につながりますので、ぜひ頑張ってください。

先生への質問

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東京海洋大学に関心を持ったあなたは

東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。