紫外線ケアの未来は、食事などの生活環境で変わる?
紫外線は今や美容の敵
小麦色の肌は健康のシンボルとされていた時代がありました。しかし今では太陽光に含まれる紫外線は悪玉とされ、日焼けはできるだけ避けるのが常識となっています。紫外線には体内のビタミンDをつくる良い面もあるのですが、過度の日焼けは悪影響のほうが大きいためです。悪影響として、紫外線が皮膚の老化を招き、皮膚がんの発生につながることが挙げられます。以前は子どもにも日光浴がすすめられていましたが、今では乳幼児であっても日焼け止めケアが推奨されるほどです。
UVA+UVBのタッグが新防止策のターゲット!?
日焼け止めは、UVAとUVBの2つの紫外線を抑止する役割があります。製品パッケージに、波長が長いUVAには「+」の値で、波長が短いUVBには「SPF」という数値で記されているのを見たことがあるでしょう。
これまで紫外線は、UVAとUVBとに分けて研究されていました。しかし研究の先進国であるオーストラリアでUVAとUVBを混ぜて実験をしたところ、UVBだけを照射して起こる事象をUVAが抑えていました。この結果から、UVAとUVBは相互に作用する可能性がうかがえます。2種のUVの相互作用は、紫外線予防の次のターゲットとなることが期待されます。
新しい紫外線ケアは生活環境がカギ
紫外線、中でもUVBはDNAを傷つけます。体は傷ついたDNAを常に修復しています。このDNAは「ヒストン」という核の中のタンパク質に巻きついて存在しているのですが、ヒストンになんらかの環境要因が関わることにより、修復の仕方が変わることが最近わかってきました。環境要因とは、喫煙(たばこの煙)、栄養状態(食事)、化学物質、皮膚温度など様々です。特にたばこの煙はDNAの修復を妨げてしまうことが明らかになっています。詳しい解明はこれからですが、生活環境をコントロールすることで、正常なDNAの修復、ひいては皮膚の老化や発がんの防止に光が見いだせるのではないかと考えられます。
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先生情報 / 大学情報
静岡県立大学 食品栄養科学部 環境生命科学科 教授 伊吹 裕子 先生
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