日本語を話す外国人とのコミュニケーションを考える
国際言語管理とは
面接試験では丁寧な敬語を使い、家族や友人とは「タメ口」で話すように、私たちは相手や場に応じて言葉を使い分けています。さらに外国人と話す際には、「何語を使うべきか」「簡単な言葉で話してみようか」といった選択も行なっています。このように「どの言語で、どう話すか」という言葉の管理について、母語を超えて広く研究する言語学の分野を、「国際言語管理」といいます。近年は日本に暮らす外国人が多くなり、外国人と日本人が日本語で会話することも珍しくなくなりました。しかし、言語管理のあり方が原因となってトラブルが生じるケースもあります。
対等な立場で接しているか
トラブルの原因となる言語管理のあり方には、いくつかのタイプがあります。例えば「第三者応答」は、外国人から日本語で質問をされた人が、その人ではなく連れの日本人に返答するような接し方を指します。ほかにも幼児にかけるような言葉を使ったり、懸命に日本語を話す様子を「かわいい」と表現したりする「子ども扱い型」、相手の外見だけで「日本語が通じない」と断定してしまう「外見予断型」などです。いずれも相手を自分と対等に見なさない点で共通しており、こうした対応の仕方に傷つき、憤った経験のある外国人が数多く存在することはあまり知られていません。
「やさしい日本語」の是非
近年では外国人向けに「やさしい日本語」を使う動きもみられます。例えば「高台に避難」を「高いところににげる」と表現することは、防災という観点では有効です。しかしそれ以外の場面でも「外国人向けの簡易な表現」が広く用いられることは、日本人に対して従属的な立場になったり、言語的な差別につながったりする可能性も考慮しなければなりません。こうした批判的な視点も含めて、外国人との新たなコミュニケーションの形を考えることが、国際言語管理の役割です。そこで得られた知見は、日本に暮らす外国人との共生や相互理解に生かされるだけでなく、日本人の考え方や文化を再発見することにもつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京外国語大学 国際日本学部 国際日本学科 教授 荒川 洋平 先生
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