ドイツ語と日本語は他人の空似
似ていない兄弟、似ている他人
さまざまな言語は、その系統によって分類できます。例えば、英語とドイツ語は、同じゲルマン語をルーツとした言語です。兄弟のようなものと言ってもいいでしょう。同じ起源の言語なので共通点ももちろんありますが、驚くほど違うところもあります。他方、日本語はドイツ語と系統が違いますが、意外な共通点がたくさんあります。「他人の空似」と言ってもいいかもしれません。
ドイツ語の語順は日本語と同じSOV
英語の文の語順というのは、主語(S)・動詞(V)・目的語(O)というSVO型で、日本語とは違いますが、欧米の言語がすべてそうであるわけではありません。ドイツ語の語順は、日本語と同じSOVが基本です。また、日本語には、「も」「さえ」「こそ」などの副助詞という単語があり、「君こそ来なさい」など、任意の語句に付いて、そこに特別な意図をこめることがあります。ドイツ語にも同様の単語があって、それを使うことで、特定の語句に焦点を当てることができます。これに対し英語では、そういう単語があまりないため、焦点を当てたい部分がある場合は、強調構文や受動態といった、文そのものの構造を変えることで対応します。
言語が普遍的に持っているもの
「君が」「君を」など、日本語では助詞をつけて文中での名詞の役割を区別しますが、この区別のことを「格」と言います。日本語やドイツ語などSOV型の言語は、格の表示がはっきりしていることが多く、「太郎が/試合に/勝った」を「試合に/太郎が/勝った」と変えても意味が通じるなど、語順は比較的自由です。一方、英語などSVO型の言語では、格の表示があまりないため、語順を変えると意味が通じなくなってしまうことが普通です。
ルーツの異なる日本語とドイツ語に不思議な共通点がある理由については、まだまだわかっていないことが多いのですが、別系統の言語における共通性というものは、言語というものの普遍的な性質を示す一つの証拠であると言えるでしょう。
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東京外国語大学 言語文化学部 言語文化学科 教授 藤縄 康弘 先生
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