多様性の中のつながりのかたち―マレーシアから学ぶこと
共に学び合う日本とマレーシアへ
「ルックイースト政策」という言葉を聞いたことがありますか? 日本や韓国の経済発展のやり方に学ぼうというマレーシアの政策です。この政策の下、今日までの30年間、マレーシアは日本に多数の留学生や研修生を送ってきました。近年、マレーシアが日本から学ぶだけでなく、日本もマレーシアから学ぶことで、双方向の交流を深めようという動きが強くなっています。例えば、マレーシア観光局の「ルックマレーシアプログラム」では、日本の大学生をマレーシアに招待して、多民族社会マレーシアの国家運営や経済発展から学んでもらおうとしています。「途上国マレーシアが先進国日本から学ぶ」という関係性から脱却し、両国の関係がより対等な学び合いの関係に近づきつつあるのです。
「アジアの縮図」―多民族社会マレーシア
現在のマレーシアを含む東南アジア海域世界は古来、東西文明が交流する十字路でした。植民地支配や独立などの歴史を経て、マレー人をはじめとする先住諸民族(「ブミプトラ」)、中華系、インド系などが構成する多民族社会マレーシアが形成されました。いわゆるブミプトラ優遇政策が採られながらも、多言語・多宗教・多文化からなる人々が、相互に交流しつつ、ほどほどの距離を保ちながら、ゆるやかにまとまっています。異なる集団の間でさまざまな問題やあつれきが生じることもありますが、マレーシアなりの流儀で、釣り合いと折り合いを図る仕組みを作りながら、国づくりを進めてきました。国際社会の中でたくましく生きていくうえで、自らが抱える多様性を障害ととらえるのではなく、むしろ強みとして生かしていこうとしているのが現在のマレーシアだと言えるでしょう。
多様性の中のつながりを求めて
21世紀の国家像を模索するマレーシアですが、この国を多民族共存のモデルとして過度に理想視するのではなく、この国の人たちが直面してきた課題と実践してきた方策から学ぶことによって、地に足のついた「多文化共生」のあり方を探ることができるのです。
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