アルゴリズムを使って人間の想像を超えたCGアートを生み出す
アルゴリズムによる描画
森にある一本一本の樹木の枝ぶりまでをすべて人の手で正確に描くのは、気の遠くなるような作業です。一方で、樹木の枝分れの法則性を表す計算方法をプログラミングすれば、コンピュータグラフィックス(CG)により、何本でも果てしなく緻密に描くことができます。
造形の法則性を数式に表す
CGも含め、コンピュータでなんらかの課題を解決するための計算とその手順を「アルゴリズム」と呼びます。あらゆる造形はなんらかの特徴を持っています。直線なのか、曲線なのか、ねじれているのか、といった特徴を観察し、そこに法則性を見いだしていくのです。そして、その法則性を表す手順や数式を考えます。動物の角のように先細っていく形なら、先に進むにつれて数値が減っていくような数式が考えられるでしょう。減り方の違いによって、尖り方に変化を加えることもできます。アルゴリズムを用いたCGは、最近では映画やゲームで欠かせない技術となっており、自然物だけでなく建築や装飾文様など人工物のアルゴリズム化も進んでいます。
造形をアルゴリズムとして表現することは、CGを描くだけでなく、伝統文化の保存にも役立ちます。例えば日本の伝統工芸品である切子(きりこ)は、切削加工によってガラスの器の表面を削って幾何学模様を施すものです。複雑な模様になると、正しい順序でカットを入れていかなければ美しい仕上がりにはなりません。カットの手順を含めて模様をアルゴリズム化することで、繊細な文様をCG映像として表現するだけでなく、伝統の技をわかりやすく保存し、後世に伝える取り組みとして応用できるとも考えられます。
現実にない造形
CGは、実際には存在しないものも描き出します。例えば、自然界では樹木が直角に枝分かれすることはありません。しかし、アルゴリズムに指示を加えれば、自然界を超えた造形が描き出されていきます。アルゴリズムから思いもしない表現が生まれることもあり、そこに、自然の模写や伝統の保存を超えた、アートとしての可能性が潜んでいるのです。
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先生情報 / 大学情報
武蔵野美術大学 造形学部 デザイン情報学科 教授 高山 穣 先生
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