スマホの顔認証はなぜ可能になった? 意外な場所で使われる高校数学
認証技術と高校数学
スマートフォンの画面ロックを解除するとき、顔や指紋を読みこませることがあります。こうした認証技術の基礎には高校で習う数学が使われています。例えば2つの対象を比べて「同じ」だと判断するときは、ベクトルの内積計算から求まる|cosθ|(類似度)を求めます。|cosθ|の計算結果が1に近ければ「似ている」、0に近ければ「似ていない」と結論づけます。スマートフォンの顔認証でも、あらかじめ登録された顔画像と目の前にいる人の顔の特徴抽出したものをベクトルとして扱い、その内積を計算し、|cosθ|が1に近いかどうかで判断できます(ベストではありませんが簡易法の1つです)。
音声認識技術を画像に応用
ラインセンサを用いた指紋認証ではセンサの上を通過した指の画像を使います。しかし指を動かす速さは人や状況によって異なるため、正しく認識することが難しいとされていました。この課題を解決したのが音声認識の技術です。音声の周波数的特徴をゴムのように考えてみましょう。人の発音は一定ではないため、同じ単語を同一人物が口にしても波形の時間長が毎回変化します。ゆっくり発音するとゴムが伸び、早く発音するとゴムが縮むようなイメージです。どの部分が伸び縮みしたかを判断し、さらに基準となるベクトル(登録データ)との類似度を比較することで、正しく認識できるようになりました。この考え方が指紋認証にも取り入れられ、センサ上を通過する指のスピードに関係なく認識が可能になったのです。
画像認識で健康を守る
3次元画像に含まれる形状データを瞬時に計測・認識する技術は、顕微鏡などと組み合わせると医療や衛生管理にも役立ちます。例えば血液を見ただけで、細胞の種類や状態などを特定することが可能です。また、水道水の品質検査にも画像認識を利用している自治体もあります。検査期間の短縮やコスト削減といったメリットがあるため、もし途上国にも普及させることができれば水の品質を向上させ、より多くの人々の健康を守ることに貢献できるはずです。
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中部大学 理工学部 AIロボティクス学科 教授 梅崎 太造 先生
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