生命力の源はどこから来るか?
エネルギー源はアデノシン三リン酸(ATP)
人間は食事をしてエネルギーを摂取しています。では、エネルギーはどうやって体を動かしているでしょう? まず体を動かすには、筋肉を動かさなければならず、筋肉を動かすには筋肉を収縮させなければなりません。筋肉の収縮に使用されるエネルギーはATPの分解により得られます。どんな場合にも、筋肉が直接使用し得るエネルギー源はATPです。ATPは、アデノシンという物質に3つのリン酸基が結合しています。エネルギーが必要になったときは、ATP分解酵素の働きによって、ATPからリン酸基がはずされて分解されていきます。リン酸基がはずれるたびに筋肉を収縮させるのです。ATPからひとつのリン酸基がはずれるとADPという物質になります。すべてのATPがADPに分解されてしまうと、もう運動を続けることはできなくなるので、ATPは常に合成され続けています。
ATPを再合成する
成人男子が1日分のエネルギーとして摂取した2000キロカロリーのうち、半分の1000キロカロリーがATPの合成に消費されます。これは重さに換算すると、およそ50kgにもなり、体重分ほどの量のATPを毎日合成していることになります。この合成には、ATP合成酵素という酵素が働いています。この合成酵素は、世界最小の回転モーターで、回転しながらADPとリン酸から再びATPを合成しているのです。ATPを合成するためには、ATP合成酵素のほかに、摂取したエネルギーをATP合成酵素に運び込むための多くの蛋白質が必要です。
生物の普遍性
海底5000m(500気圧、4℃)や、100℃の温泉の源泉など、地球上にはさまざまなところに微生物がいて、この微生物たちも私たちと同じように、ATPの合成を行っています。しかもATPの合成に関わる酵素の形もあまり変わりません。ここに生物の多様性と普遍性の両面を見ることができるのです。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 生物生産学部 生物生産学科 教授 三本木 至宏 先生
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