作業で精神的健康が回復する 自分らしい生活を取り戻す地域作業療法
精神的健康を回復する作業
人は、何らかの不調があると、それにかかりきりになってしまいます。そのようなことが毎日続くと、精神的健康を損ねて自分らしく生活することが難しくなる場合があります。「精神領域の作業療法」は、遊び、日常生活活動、仕事などの、生活する上でのすべての行為・活動である作業を通して、人の精神的健康の回復をめざします。人の精神と身体は表裏一体です。例えば不安でたまらない時でも、過ごしやすい日に病院の庭を軽く散歩すると、少しすっきりした気持ちになることがあります。症状が徐々に治まる頃には病院だけではなく、住み慣れた地域で環境と生活のつながりを感じながら作業を行うと、さらに効果が上がります。それを「地域作業療法」といいます。
自分らしい生活をするためには?
精神領域における地域作業療法で必要とされることは、人によってさまざまです。そのため、「どんなことができるようになりたいか」「どのような生活を送りたいか」という目標をサービス利用者と話し合います。より効果的な作業療法の実施のために、利用者と作業を検討する参加型研究も行われています。
ある研究で「自分らしくいきいきと生活するために必要なこと」を参加利用者とグループで話し合ったところ、「皆の生活のために助け合うことで人の役に立つ」などの意見にまとまりました。その後、この意見を生かして「皆で散策」を行いました。この過程は、利用者自身で自分らしい生活をつむぐ練習になりました。
精神領域における地域作業療法の新たな課題
精神領域における地域作業療法は、通常、対面で行われます。一緒に作業をする、あるいは同じような作業をしている人が近くにいて時々話をする、作業をしているときの雰囲気を共に感じられるなどの環境が大切だからです。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行によって、対面での作業療法に制限ができ、工夫が必要になりました。災害や感染症の流行など不測の事態が起きたときでも質の高い作業療法を続けられるよう、対処法の研究が求められています。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 健康福祉学部 作業療法学科 准教授 谷村 厚子 先生
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