「潜在意識」が人間の行動を左右する

「潜在意識」が人間の行動を左右する

知覚-運動系の情報処理プロセスを実験で解明

人間は、目や耳などから得た「知覚情報」を脳で「認知情報」に変換し、それをさらに「運動情報」に変えて体を動かすという「知覚-運動系の情報処理」を絶えず繰り返すことで、複雑な動きもスムーズに行うことができます。こうした知覚・認知・運動システムの機能的特徴や、一連の情報処理の流れに影響を及ぼしている要素を、実験を用いて探る学問が実験心理学です。

潜在意識が認知行動に影響を及ぼす

そうした実験をひとつ紹介しましょう。モニターにランダムに映し出される1から9までの数字をタッチして、文字が映し出されてから手を動かし始めるまでの反応時間(タッチするまでの動作時間ではない)を調べます。すると、数字の1の場合、左寄りに表示されたときは、反応時間が短く、右寄りに表示されたときは、長くなる傾向が見られました。一方、9の場合は、左寄りに表示されると、反応時間が長く、右寄りだと、短くなりました。また、同じ数字を横に羅列して一本の線を作り、その中心を指し示す実験では、2で線を作ったときは、中心より左寄りを指し、9のときは、中心より右側を指す傾向が見られました。これらの実験結果から、「人間には、『小さい数字は左側に、大きい数字は右側にある』という潜在意識がある」ということがわかりました。そして、それは、数字を横書きで書く場合、小さい順に左から書くことが影響しているのではないかと推察されます。右書き(アラビア文字、ヘブライ文字など)の文化では逆のパターンがみられるという報告もあります。

医学分野と連携し、脳機能障がいの研究も

近年、実験心理学でも異分野との連携が進んでおり、例えば、医学分野での連携に、高次脳機能障がいの研究があります。脳の頭頂葉を損傷すると、左視野を無視してしまう「半側空間無視」という失認症状が出ることがありますが、視覚に異常がなくても症状が出るため、視覚情報が運動情報に変換される過程に問題があると考えられ、その解明に実験心理学の手法が活用されています。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 人文社会学部 人間社会学科 准教授 石原 正規 先生

東京都立大学 人文社会学部 人間社会学科 准教授 石原 正規 先生

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実験心理学、行動科学

メッセージ

私の研究室では、先行研究に関する情報収集、実験装置の製作にはじまり、客観的なエビデンス(証拠)を得るための実験の組み立て方、研究方法、予想される結果など、問題解決の糸口を学生と一緒に考えながら研究を進めていきます。
研究は、主に実験心理学的手法、行動科学的手法を用いて行いますが、研究の対象は、あらゆる人間の活動です。新しい発想で研究に取り組んだり、新しい実験パラダイム(枠組み)を模索したりすることのできる好奇心旺盛でチャレンジングな学生を歓迎します。

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。