「連携」を問い直して子どもを救え! 社会福祉学の挑戦的視点
機関ごとの「違い」
子ども虐待対応には、様々な機関や職種が関わります。行政権限を持つ児童相談所のほか、市区町村の子ども家庭福祉担当、警察、保育所、幼稚園、学校、医療機関等、子どもや家庭に関わるあらゆる機関・職種が連携して個別のケースに対応しています。しかし、多機関・多職種間の連携は簡単ではありません。例えば、市区町村の子ども家庭福祉担当が1人の子どもの利益を守ろうとすることと、学校が公教育機関として全生徒に等しく教育機会を提供しようとする姿勢が葛藤を生むこともあります。それぞれ異なる専門性と組織論理を持っており、その「違い」がときに連携を難しくすることもあります。
多職種連携の「調整」に必要なこと
子ども虐待対応においては、市区町村の子ども家庭福祉担当が多職種連携の「調整」を担うことが多くなります。ある研究で調整担当者にインタビュー調査を行ったところ、各機関の「違い」を否定せず、認めながら調整をしていることが分かりました。そのうえで、協力を求める際には、事務的に仕事を割り当てるのではなく、「自分がまずは担う」ことを実践していました。自らが先に動くことで相手の譲歩や協力を引き出しているのです。
「連携」を問い直す
社会福祉学は、弱い立場の人の役に立つ研究が多いため、「良い人」「世話好きな人」に適していると考えられがちです。間違いではありませんが、少なくとも研究領域においては、あらゆることに挑戦的な視線を向け、「本当にそれでいいのか」と問う力が求められる学問でもあります。
「連携」という手法は子ども虐待対応に限らず、対人援助領域(医療、保健、教育等)において広く取り入れられていますが、まるで免罪符のように使われる「連携」のあり方を問い直し、その実態や課題を明らかにすることは、結果として虐待を受ける子どもや、虐待せざるを得ない状況にある保護者を救うことにつながるのです。
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先生情報 / 大学情報
岩手県立大学 社会福祉学部 社会福祉学科 准教授 實方 由佳 先生
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