明確なエビデンスをもとに、生活を支える公共政策を作る
私たちの生活を支える公共政策
「公共政策」と聞くと、とても漠然とした、広いイメージを持っている人が多く、普段はありがたみや意義を感じられていないかもしれません。しかし、実際は、水や電気、ガス、インターネットなどをはじめとした私たちの生活には欠かせないシステムやサービスに関わる、身近で大事なものです。
少子高齢化を迎え、政策に使える資源が限られる中、エビデンス(科学的な根拠)を活用して、質の高い政策をつくる必要性は高まっています。そこで、「EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)」と呼ばれる、エビデンスを用いて政策を立案しようとする取組みが注目されています。
目標設定を間違えると本末転倒に
しかし、一口に「エビデンス」と言っても、その中身は一様ではありません。エビデンスをもとにした政策を作る際、最終的に「何を目標値・指標にするか」が大事なポイントとなります。例えば「図書館の経営状態を良くする」という目的のために「本の貸し出し数を増やす」として具体的な数値目標を設定するとします。単純に貸し出し数を増やすだけなら、世間から注目を集めているような本やベストセラーとなった本を集めればいいでしょう。しかし、そのような本ばかり集めるのは、図書館本来の役割と言えるのでしょうか。このように、下手にわかりやすい数値を設定したせいで、本当の目的を見失うという事例は世界中で起こっています。
エビデンスに基づいた安全への取り組み
EBPMはイギリスやアメリカにおいて盛んで、日本には少し遅れて入ってきました。しかし、国内でもエビデンスをもとにした政策づくりは少しずつ増えています。ある県では、水難事故の防止や救助時間の短縮を目的として、波の定点画像や気候のデータを解析し、企業と県が連携し海の危険なエリアである「離岸流」に人が近づいた際、ドローンや監視カメラを通じてライフセーバーが駆けつけるシステムを作りました。この取り組みは成功し、現在では他の海岸でも導入が検討されています。
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先生情報 / 大学情報
岩手県立大学 総合政策学部 総合政策学科 法律・行政コース 講師 杉谷 和哉 先生
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