障害者や高齢者が共に地域を支える農福連携の広がり

障害者や高齢者が共に地域を支える農福連携の広がり

農家と障害者の問題を同時に解決

農業に携わる人たちの高齢化が進み、後継者もいないために、人手不足の問題が起きています。一方で、障害者は、働きたくても仕事がない、働いても賃金が非常に安いという問題を抱えています。両者をつなぎ、障害者が農業に従事することで両方の問題を解決する取り組みが「農福連携」です。福祉事業所がそこで就労する障害者を中心に、自分で保有する農地や借りた農地で農業を行う形態と、農作業の繁忙期を中心に農家や農業法人から作業を受託する形態の2つがあり、20年ほど前から広がっています。特に後者の作業受託型の形態は、農家や農業法人が障害者を知り、障害者や事業所のスタッフが農業を知ることができ、前者の形態での運営につながる入口として広がりを見せています。

障害者が地域を支える柱に

鹿児島県には、福祉作業所が20haほどの規模で農業を営んでいる福祉事業所の事例があります。広大な農地でお茶やトマトなどを作り、肉牛と豚の畜産も手掛け、育てた牛をソーセージなどに加工して販売もしています。耕作放棄地になってしまう土地を耕すことで、地域の環境を保全すると同時に、日本の食料供給の一翼も担っています。ここでは障害者は「守るべき弱者」ではなく、地域を支える柱となっているのです。
自治体も重要な役割を果たしています。例えば香川県では、県が主体となって、県内全ての農家・農業法人と福祉事業所に呼びかけ、農作業の委託のマッチングを行っています。

水産業・林福連携や高齢者への広がり

鹿児島県の事例で働いているのは主に知的障害者で、機械を使ったお茶の収穫や肉・大豆の加工作業も担っています。従来は、知的障害者はこのような作業は苦手だとされていました。実際には、身に付けるまでに時間がかかるだけで、できないわけではなかったのです。農福連携は、障害者に対する思い込みを拭い去る役割も果たしています。最近では農業から水産業や林業にも広がり、農業法人が障害者を直接雇用するケースも徐々に増えてきました。また、障害者だけでなく、高齢者や介護を受けている方の仕事をつくる、さらには介護予防やリハビリテーションを行う取り組みも始まっています。

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先生情報 / 大学情報

東海大学 文理融合学部 経営学科 教授 濱田 健司 先生

東海大学 文理融合学部 経営学科 教授 濱田 健司 先生

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農学、福祉社会学、経営学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私たちは、みな一人一人違います。得意なことや不得意なことはもちろん、身体の状態や感情にも個性があります。障害者と健常者に特別な違いはありません。一部の機能が飛びぬけていたり、低かったりするだけのことです。障害者か健常者かを問わず、自分がやりたくてやれることで、地域、社会の中での役割を見つけてください。これからは従来の、健常者だけでつくられた社会を想定した生き方をする必要はありません。自分に合った生き方をして、自分と違う人たちと一緒に生きる、社会そして未来をつくってください。

先生への質問

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