ゲートウェイを攻略せよ! 神経の仕組みを利用した病気の治療
「病は気から」は科学的にも正しい
私たちの体は、加齢やストレスにより神経回路が活性化すると、血液細胞が組織に侵入するゲート(入り口)を血管に作ります。これを「ゲートウェイ反射」と呼びます。血液中には病原体から身を守る免疫細胞が多数存在しますが、これらもまた加齢やストレスにより自己攻撃性を持つようになります。攻撃性を持つ免疫細胞が開いたゲートから組織内に入り込み、炎症を引き起こすことがあります。原因がストレスにもあるという意味では、「病は気から」ということわざもあながち間違っていません。
「炎症」は大部分の病気に関わっている
炎症というと「少し腫れるだけ」という場合もありますが、アレルギーやがん、自己免疫疾患、アルツハイマー病など、様々な病気に関わっています。COVID-19、いわゆる新型コロナウイルス感染によるサイトカインストームも炎症が一因です。
ゲート付近での炎症は、免疫関連タンパク質であるインターロイキン-6(IL-6)の増幅回路(IL-6アンプ)が活性化することから始まり、その際IL-6アンプはそれぞれの臓器で特別な因子も発生させます。最先端の量子技術を使うとこの因子を検出することができ、さらに細胞の活動状況を画像で見ることができるPET検査に応用展開すれば、各臓器の炎症の早期発見が可能になります。
新しい治療法への期待
ゲートは神経回路に人為的な刺激を与えることで閉じさせることも可能なため、ゲートウェイ反射は炎症の神経モジュレーション医療(神経回路に人為的な刺激を与える治療法)となりえます。この方法で慢性炎症性疾患やCOVID-19の治療薬が期待されていますし、人間の体内の隅々の神経を利用してほかの疾病治療にも応用できます。アメリカではすでに脳と末梢器官をつなぐ迷走神経への刺激で関節リウマチや炎症性腸疾患を治療する臨床研究も始まっています。ゲートウェイ反射を利用する治療方法は簡単に言えば神経を刺激するだけですから、既存の治療法よりコスト的に低く、安全性も高いと言えます。
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北海道大学 遺伝子病制御研究所 分子神経免疫学部門 教授 村上 正晃 先生
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