3次元画像計測システムを応用した、非接触での呼吸の検査方法とは
カメラは実物と写真を見分けられるか
最近のスマートフォンのロック機能に「顔認証システム」が使われています。これはカメラを使って本人の顔か否かを判断するものですが、普通のカメラでは平面の情報である2次元しか認識できないので、本人の顔そのものではなく、本人の顔写真を見せても、認証してしまう可能性があります。より確実な認証を行うには、形の情報である3次元情報の計測が必要になります。
どうやって3次元を認識するのか?
3次元画像計測には、いくつかの方法があります。「受動型ステレオ法」はカメラを左右に2台並べて同時に撮影するものです。2台のカメラを使って同じ物を写した時、2つの画像の間のずれから対象の形を求めることができます。2台のカメラの片方をパターン投光器に変えたものが「能動型ステレオ法」です。例えば、投光器で線状の光を対象物に当て、投光器とは別の角度から見ると、対象物の形に沿って光の線が曲がります。この曲がり方をカメラでとらえて解析することにより形状を算出することができます。光のパターンは様々に設定でき、空間にたくさんの点を投影することで対象までの距離の分布を精密に計測する「3次元画像計測システム」は、さまざまな分野での応用が期待されています。
非接触で呼吸を調べる
人はただ呼吸をするだけでも微妙に体が動きます。3次元画像計測システムは、体の動きから呼吸の様子を正しく把握することができます。もし、ペダル漕ぎのような運動をしていても、運動による上体の動きと、呼吸による胸元の動きとはリズムが異なるため、別々の動きとして検出できるのです。
これまで呼吸を調べるときはガスマスクを用いる装置が必要でした。また、肺機能障害の検査には、筒に息を吹き込んで計測する器具が用いられてきました。3次元画像計測システムを使えば、大掛かりな装置は不要で、自然な状態で負担の少ない検査ができます。3次元画像計測システムによる非接触での呼吸の検査は、感染症対策の面でも医療現場での実用化が期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
公立千歳科学技術大学 理工学部 電子光工学科 教授 青木 広宙 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
理工学、電子光工学、画像工学、医工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?