電気抵抗がゼロになる? 超伝導の応用の可能性を探る
超伝導とはいったいどんな現象?
超伝導(Superconductivity)とは、ある金属や化合物をとても低い温度にまで冷やしていくと、電気抵抗がゼロになってしまう現象です。1911年にオランダで液体ヘリウムによる超低温環境での実験の際に発見されたこの現象は、その後長い間、マイナス250℃より高い温度での発生が確認されることはありませんでした。しかし、1986年にマイナス140℃前後で超伝導状態となる銅酸化物が発見されてから、超伝導の研究は一気に加速し、さらに扱いやすい低温環境、あるいは常温で機能する超伝導体の発見に向けて研究が続けられています。
高精度のセンサーに超伝導を活用
超伝導の応用が有効な分野には、さまざまなものがあります。例えば、リング状の回路で超伝導状態を起こさせると、そのリングに磁束が発生しているかどうかを確実に識別できるため、非常に感度の高い「磁気センサー」を作ることができます。SQUID(超伝導量子干渉計)と呼ばれるセンサーは、人間の脳の活動によって発生する電流の磁場を精密に測定したり、心電図などでは発見できない心臓疾患を発見したりすることが可能です。また、天文学の分野でも、超伝導の技術を応用したセンサーが電波天文台の受信機に採用されており、さらには人工衛星に搭載して観測に活用することなどが試みられています。
超伝導コンピュータの未来は?
超伝導の技術は、非常に高速なコンピュータ、あるいは非常に消費電力が低くてすむコンピュータのデジタル回路への応用も期待されています。超伝導体のリングの一部にごく薄い絶縁膜を設けることで、磁力線が出入りする仕組みを取り入れています。超伝導技術を使ったコンピュータでネックとなるのは、それ自体を冷やさなければならないという点ですが、日本や米国で現在も研究開発が続けられています。
電気抵抗がゼロになるという私たちの想像を超えた超伝導の現象は、もしかすると将来、とても身近な存在になるのかもしれません。
参考資料
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電気通信大学 情報理工学域 III類(理工系) 電子工学プログラム 教授 水柿 義直 先生
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