文豪が活躍するマンガやアニメから、現代社会を読み取る
キャラクターの描かれ方について考えてみよう
『走れメロス』の太宰治や、『羅生門』の芥川龍之介、『山月記』の中島敦など、教科書で触れたことのあるような文豪たちやその文学作品が近年、マンガやアニメの題材として数多く取り上げられています。それらは現代の文化と結びつくことで、どのように表現されているのでしょうか? これまでの人物像や作品の解釈から、なにか変更が加えられているなら、どうしてそのように変化しているのでしょうか?
今求められている新しい人物像
例えば太宰治は、代表作『人間失格』の影響もあって、これまでは「暗い」「死」といった印象で語られることが多い人物でした。実際に彼は、『人間失格』において「恥の多い生涯を送って来ました。」と語りはじめる主人公・葉蔵との共通点も多く、また本作を書き上げた1か月後に入水(じゅすい)自殺をしています。これではマイナスのイメージになるのも納得です。そんな彼が、昨今のマンガやアニメの中では、時には死を求めつつも、ひょうひょうと生きるキャラクターとして描かれ、人気を集めています。このケースからは、がむしゃらに頑張って生きている姿ではなく、「死にたくなることもあるけど、それでもいいんだ」といった共感を与えてくれる新しい人物像が求められ、現代の読者や視聴者の心をつかんでいることがわかります。
時代に合わせた変化と、ずっと変わらない魅力
長きにわたり生き続けるものは、それぞれの時代の社会的背景に合わせて姿や形が変わることがあります。その変化こそが、時代ならではの新しい視点や、社会が求めているものを映し出しているのです。また、逆に変わっていない部分が、本来の軸であり、個性であり、魅力ともいえます。
このように、さまざまな作家や作品を研究対象に、時代や社会との関わりの中で生まれる新たな切り口から読み込んでいくと、今までになかった楽しみ方ができます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
ノートルダム清心女子大学 文学部 日本語日本文学科 教授 長原 しのぶ 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
文学、日本文学、近現代文学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?