食品のおいしさ(食感)を操るには
食品のおいしさと食感
人が食品をおいしいと思うとき、食感は重要な要素となります。例えば肉をミキサーでドロドロにしても、含まれる成分は変わりませんが、そのような食感でおいしさを感じる人はいません。人は微妙な違いを認識するため、食感は付加価値の高い食品を作る上で欠かせない要素なのです。
食感はなぜ変わる?
食感は時間の経過によって変化します。例えばサクッとしているクッキーは、ふにゃっとした食感へと変化します。これは「ガラス-ラバー転移」が起こるためです。ガラスは硬くて脆いのに対し、ラバー(ゴム)は弾力があります。多くの食品は乾燥するとガラス化し、サクッとした食感が生まれます。しかし吸湿してラバー化すると柔らかくなります。このとき基準になるのがガラス転移温度です。ガラス化したクッキーは吸湿するとガラス転移温度が下がり、常温よりも低くなったときに、ラバー化します。したがって、サクッとした食感を維持するには、トレハロースなどガラス転移温度が高い成分を配合すればよいのです。一方で乾燥していても柔らかい食感に設計したいときは、ソルビトールなどガラス転移温度が低い成分を配合します。このように食品のガラス転移温度を考慮することで、食感制御が可能になります。
食感を維持してフードロスを改善
食感などのおいしさが損なわれると、商品価値が失われてしまいます。例えば揚げたてのフライも時間が経ってベチャッとすると売れなくなり廃棄されます。これには先のクッキーと同じアプローチが有効です。また、食品は温度が高いと腐りやすいにもかかわらず、コンビニのお弁当は少し高めの温度で管理されています。ごはんを冷やすと再結晶化という物理現象が起こって硬くなるからです。消費者は常に電子レンジで温めて食べるとは限らないため、高めの温度で管理し再結晶化を防いでいますが、保存期間は短くなります。これに対しては、結晶成長学分野などで議論されているようなアプローチが有効です。食感を維持するための研究は、フードロス改善にも貢献しています。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 生物生産学部 食品科学プログラム 教授 川井 清司 先生
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