ご飯の保存容器は、なぜ底が凸型? 加熱と食品の関係を探る
ご飯を効率よく加熱する容器とは?
一度炊いたご飯を冷凍保存するとき、底の中央が盛り上がっている凸型のタッパーを使ったことはありませんか。底を平らにしない理由は、電子レンジでご飯を再加熱したときの温度変化を観察するとわかります。凸部分があると、そこを中心にご飯に熱が伝わるため、再加熱の効率がいいのです。
シミュレーションで温度変化を探る
さらに効率よくご飯を再加熱できる容器の形を探るために、企業と共同でコンピュータシミュレーションを使った研究が行われています。その結果、底の凸部分を2つに増やしたモデルのほうが、より早く均一にご飯が温まるとわかってきました。このようにコンピュータでシミュレーションをすると、試作品を使った実験の回数を減らし、新商品の開発コストを下げることができます。また、加熱による変化をアニメーションのように視覚化した上で、科学的な証拠を示すことが可能です。
家庭でプロの味を再現
レストランで作られているような料理を家庭で再現するときにも、コンピュータシミュレーションが役立ちます。例えばローストビーフを作るとき、プロの料理人は仕上げにバーナーで表面をあぶり、クラストと呼ばれる固い層を作っています。これがパリッとした食感の秘訣です。しかしあぶる時間が少し長いだけでクラストが分厚くなりすぎ、味が落ちてしまいます。多くの料理人は経験によって技術を磨いているため、科学的な根拠に基づいた加熱時間がわかりません。そこで、コンピュータシミュレーションで分析を行えば、最適な加熱時間や手段がわかり、家庭でもプロの味が再現できると期待されています。
人間はほとんどの食品に熱を加えて食べています。しかし加熱しすぎると味や栄養を損ねたり、アクリルアミド、ヘテロサイクリックアミンなどの危害因子が生成され、安全性が低下したりすることもあります。コンピュータシミュレーションを使いながら最適な加熱手段を探る研究は、食品の栄養価を保ったままおいしく安全に調理するための研究でもあるのです。
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東京海洋大学 海洋生命科学部 食品生産科学科 准教授 ラベ ベレス イヴァン アントニオ 先生
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