計算流体力学のシミュレーションは、未来へのタイムマシン!
空気感染の確率を計算
計算流体力学は、「ナビエ・ストークス方程式」を用いて、流れの物理現象をコンピュータで解析する学問です。新型コロナウイルス感染症で問題になっている空気感染も流れの一つです。パンデミック(世界的大流行)以降、さまざまな場所についてのシミュレーションが行われてきました。空気感染を考えるには、その場所の空気の流れを解析し、そこに飛沫の動きを加えます。飛沫は粒の大きさによっても動き方が変わり、大きいと重力の影響を、小さいとヒトの体温の影響を受けます。その場で起こり得るさまざまな状況を考慮したシミュレーションをすべて行うことで、感染の確率が割り出せるのです。
感染を防ぐ「工学ワクチン」
しかし、人のいるすべての場所についてシミュレーションをするのは不可能です。そこで、その場所の感染リスクをもっと手軽に測るため、スマートフォンを使った簡易な解析方法の研究が進められています。スマートフォンのカメラで部屋の3Dスキャニングを行い、そのデータに部屋の換気口やエアコンの位置などの条件を加えます。すると、あらかじめシミュレーションした何万通りの計算から近いデータがマッチングされ、瞬時に感染の確率がわかるというものです。これは感染を工学的に防げることから「工学ワクチン」と名付けられ、実用化に向けた開発が進められています。
10分後の未来を予測する
このように、計算流体力学シミュレーションはこれから起こることについての予測ができます。10日先や10年後といった遠い時間になると正確な予測を導くことは困難ですが、少し先の予測はさほど難しくありません。もし30分後の予測を20分間でシミュレーションできれば10分後の未来がわかるということです。10分あれば、例えば悪天候時の飛行機の航路の先の状況が把握できますし、津波などによる被害を少しでも軽減できます。計算流体力学シミュレーションは、私たちの生活の安全を守る、未来へのタイムマシンなのです。
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先生情報 / 大学情報
京都工芸繊維大学 工芸科学部 設計工学域 機械工学課程 教授 山川 勝史 先生
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