肥満を予防する!? 指令を出す「第二の脳」の働きとは
1万種類以上あるポリフェノール
食べ物には、ヒトの健康に役立つ様々な成分が含まれています。その1つがポリフェノールです。ポリフェノールは植物が光合成をした時に出てくる代謝産物で、1万種類以上発見されています。ブルーベリーのアントシアニン、お茶のカテキンもポリフェノールの仲間です。カカオや黒大豆の種皮などに多く含まれている、カテキンがいくつかつながった「プロシアニジン」の健康効果の研究が進んでおり、研究の結果、構造の小さなカテキンよりも、構造が大きくて消化管から吸収されないプロシアニジンのほうが肥満・高血糖予防の効果が高いことがわかってきました。ではなぜ消化管から吸収されずにそのまま排出されるプロシアニジンのほうが肥満・高血糖予防効果が高いのでしょうか?
腸が脳に信号を送る!
それを解く鍵は「第二の脳」と呼ばれる腸の働きにありました。腸の細胞膜上には色々な受容体があります。体内に入った食物の成分は、適した受容体のポケットから、細胞の中に色々な信号や情報を送ります。プロシアニジンが受容体に入ると、ホルモンが分泌され、脳にも信号が伝わって満腹中枢を刺激して食欲を抑えたり、エネルギーを燃焼する因子を活性化することがわかりました。多くの健康効果を持つポリフェノールですが、体の中では「異物」と認識されるため、大量に摂取すると健康を害する危険がありますが、プロシアニジンは消化吸収されないので、内臓の負担にならないというメリットもあります。
何をどれだけ、いつ、食べるか
最近では何をどれだけ食べたらいいかだけではなく、体内時計のリズムを活用して、「いつ食べると効果が高いか」という研究も進んでいます。プロシアニジンの場合は、代謝が落ちて、脂肪が蓄積されやすくなる夜間に食べるとより効果を発揮することもわかりました。
このように食べ物が人間の体内に入った時、その成分は受容した部分だけで効果を発揮するのではなく、全身はつながっていて、組織間で情報交換をし、別の臓器や組織でも効果や機能を発揮しているのです。
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神戸大学 農学部 生命機能科学科 准教授 山下 陽子 先生
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