未来につながるインフラの計画―土木計画学の世界
世代を超え、広く社会のために計画されるインフラ
日本中に張り巡らされた道路や橋などのインフラ(社会基盤)はどのように計画され、創られ、維持されているのでしょうか。それらは、特定の人のためではなく、将来の世代を含めた広い社会のために、そして地域の歴史や伝統、自然環境、さらには将来に起こりうる変化も考えて計画されなければなりません。こういった社会基盤を、「いつ」「どこに」「どれくらい」建設して維持するかということを探究するのが「土木計画学」です。
効果を明確に提示する役割
例えば、地方の道路を造る場合、メリットを受けるのはその道路を使う人ですが、その財源の多くは都市部の税金であることを考えると、都会の人にはデメリットしかないように思われます。土木計画学の分野ではコンピュータシミュレーションを使い、道路ができた場合の効果はどういった地域の誰に帰属するかを明確にして提示します。
しかし、どのくらいのメリットとデメリットの差が許容されるかに対する明確な答えは、実は存在しません。ただし、計画を考えるプロセスで客観的な効果を示すことは重要で、これをもとに住民や政治家など、いろいろな人の意思決定が進められていくのです。
新しい学問領域「市民工学」へ
このように見ていくと、土木計画学は、工学系の学問でありながら、社会科学や人文学の要素が強いことがわかります。効果の計測には数学や経済学、実現には政治的プロセスなど哲学的な思考を扱う学問、さらに心理学や景観・デザイン学など多岐にわたる知識を総動員する必要があります。
この分野の研究は、土木だけにとどまりません。環境問題に対処する環境政策や防災計画、発展途上国でのインフラ整備計画支援による貧困の問題の改善など、近年幅広くなり、従来の土木工学も含めた新しい領域といわれる市民工学ともつながっていくのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 工学部 市民工学科 教授 小池 淳司 先生
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