法律が森と動物をどう守っているのか
人間も自然の一部であるという考え方
自然保護と法律の関係を考えるとき、2つの考え方があります。1つは、人間のために自然をどう守っていくかという、人間中心のものです。例えば、狩猟動物を取り過ぎないことを目的とした「鳥獣保護法」や、木材としての森林を守るために制定された「森林法」などです。もう1つは、人間も自然の一部であるという考え方に基づき、自然そのものを守るものです。1970年頃から環境に関する社会的なムーブメントが起き、人間中心のものから自然との共生という考え方にシフトしてきました。1990年代前半から、生物の多様性や生態系を崩さないなど、自然環境自体を守るという考え方が広がり、国内法の中に反映されるようになりました。絶滅のおそれのある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約を期に制定された、国内取引を規制する法である「種(しゅ)の保存法」(1992年)は、野生の生物や植物の種を保護するという生物自体の価値を認めた法律です。この法律で「絶滅危惧種」と指定された野生動物は、捕獲の禁止、売買の禁止、生息地となる一定地域の保全などが認められています。1993年の「環境基本法」でも、自然環境の保全を重視することに触れられています。
自然を守るだけでなく、再生事業も
そうした中、鳥獣保護法にも生態系を保全するという項目が加えられたり、「傑出した景観」だけが保護の対象に指定されていた「自然公園法」では、何気ない里山なども指定に加えられるなど、もともとあった古い法律にも新しい考え方を取り入れた条文が加えられるようになってきました。それでも、法律ごとにバラバラに運用されていましたが、2008年に「生物多様性基本法」という法律が制定され、初めて国内全域で自然を保護するための、より具体的な方策が示されたのです。自然を守るだけでなく、2004年には失われた自然を元に戻す自然再生事業についての法律もでき始めました。湿地の回復や森林再生、河川の修復などの事業も少しずつ行われています。
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