講義No.02397 法学 環境学

法律が森と動物をどう守っているのか

法律が森と動物をどう守っているのか

人間も自然の一部であるという考え方

自然保護と法律の関係を考えるとき、2つの考え方があります。1つは、人間のために自然をどう守っていくかという、人間中心のものです。例えば、狩猟動物を取り過ぎないことを目的とした「鳥獣保護法」や、木材としての森林を守るために制定された「森林法」などです。もう1つは、人間も自然の一部であるという考え方に基づき、自然そのものを守るものです。1970年頃から環境に関する社会的なムーブメントが起き、人間中心のものから自然との共生という考え方にシフトしてきました。1990年代前半から、生物の多様性や生態系を崩さないなど、自然環境自体を守るという考え方が広がり、国内法の中に反映されるようになりました。絶滅のおそれのある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約を期に制定された、国内取引を規制する法である「種(しゅ)の保存法」(1992年)は、野生の生物や植物の種を保護するという生物自体の価値を認めた法律です。この法律で「絶滅危惧種」と指定された野生動物は、捕獲の禁止、売買の禁止、生息地となる一定地域の保全などが認められています。1993年の「環境基本法」でも、自然環境の保全を重視することに触れられています。

自然を守るだけでなく、再生事業も

そうした中、鳥獣保護法にも生態系を保全するという項目が加えられたり、「傑出した景観」だけが保護の対象に指定されていた「自然公園法」では、何気ない里山なども指定に加えられるなど、もともとあった古い法律にも新しい考え方を取り入れた条文が加えられるようになってきました。それでも、法律ごとにバラバラに運用されていましたが、2008年に「生物多様性基本法」という法律が制定され、初めて国内全域で自然を保護するための、より具体的な方策が示されたのです。自然を守るだけでなく、2004年には失われた自然を元に戻す自然再生事業についての法律もでき始めました。湿地の回復や森林再生、河川の修復などの事業も少しずつ行われています。

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先生情報 / 大学情報

酪農学園大学 農食環境学群 環境共生学類 教授 遠井 朗子 先生

酪農学園大学 農食環境学群 環境共生学類 教授 遠井 朗子 先生

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メッセージ

地球環境問題への対処には、国際協力が不可欠です。環境に関するさまざまな国際法や国内法を効果的に実施し、条約の目的を達成するにはどのような規制手法やアプローチが望ましいのかを研究しています。法律というと、決まったことに適用していくというイメージがありますが、環境に関する法律は、今までにない新しい概念で新しい社会を作り出していくものです。地域環境学は環境をキーワードに、世界ともつながっていける分野なので、広い視野を持って一緒に研究してみませんか。

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北海道の政治・経済の中心都市札幌から快速電車で10分、本学はそこに132haの広大なキャンパスを構えています。世界の人口が増幅を続ける中、40%前後の我が国の食料自給率は、今後ますます問題となるのは確実です。そうした環境下にあって、大地を健やかに育て、健康な食物を育み、それを食して健やかな人が育つ。こうした「循環と共生」をテーマに掲げながら、学生一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出せるような教育を実践することを使命と考えています。