何気ない動作で人の魅力がアップする!? ~心の情報処理プロセス
心で起こる情報処理プロセスを解明
「認知心理学」は基礎心理学の一つで、人の心をコンピュータとして考え、その情報処理メカニズムを解明する学問です。心理学では、何かの刺激とそれに対する反応の関係について研究が行われてきました。認知心理学では、刺激と反応の間に一種の情報処理(心の情報処理)が行われていると考えます。この考え方に従って、私たちが普段目にする何気ない動作が他人の心理にどう働くのか、コミュニケーションにどう関係するのかが研究されています。
「おじぎ」と「うなずき」で人の印象が変わる?
「身体動作で人の印象は変わるのか?」を検討した実験があります。日本では、好印象を与えるとして「おじぎ」が自然に行われていますが、本当に印象が変わるのかは明らかではありませんでした。そこで、3DのCG人物モデルの「おじぎ」「のけぞり」「静止したまま」の3パターンの動画を見た人に、動画内の人物の魅力を評定してもらい、「平均魅力評定値」を計測しました。その結果、おじぎの状態がほかに比べて高くなり、おじぎをした人への主観的魅力を上昇させることがわかりました。
また「うなずき」と「首振り」についても同様の実験を行い、うなずくと好ましさと近づきやすさがアップし、首振りは近づきやすさがダウンすることがわかりました。「うなずき」は肯定や同意、「首振り」は否定や拒絶を示す動作として印象形成に影響しているのです。
社会や道具開発に~文系のデータサイエンス
おじぎをすると礼儀正しい、うなずきながら会話を聞くのは肯定的、首振りは否定的というのは当たり前のことだと思うかもしれませんが、認知心理学は人の心の「当たり前」がどんなメカニズムなのかを数値化し、解析する基礎研究です。刺激の入力による人の心の情報処理プロセスがわかれば、例えばWebコミュニティで使われるアバター開発や、ヒューマノイドロボットの評価向上、より使いやすいソフトウェアの開発などに役立つと考えられています。
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山形大学 人文社会科学部 人文社会科学科 人間文化コース 准教授 大杉 尚之 先生
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