実験心理学は、「人間らしさとは何か」を考える学問
ヒューマノイドも完璧にはまねできない人間の行動
最近のロボット開発の進歩には目を見張るものがあります。ヒューマノイドと呼ばれる人型ロボットは、手足を動かすことはもちろん、悲しい、うれしいといった表情まで作ることができます。しかし、そうした高い能力を備えたロボットでも、その動きや表情は、「人間さながら」というレベルには、まだ遠いと言わざるをえません。それは、まだロボットが人間の行動を完全には再現できていないからでしょう。
知覚-認知-運動の繰り返しが人間らしい行動に
人間の行動は、一見シンプルに見えるものも、分析してみると、実に多くの要素で構成されていることがわかります。例えば、自動販売機で飲み物を買う動作を考えてみましょう。まず、販売機に並んだ飲み物の種類を目が2次元情報としてとらえ、それを脳が3次元の空間情報として認識し、自分の好みや今の気分、価格、量など、さまざまな要素をふまえてどれを買うか決めます。その判断は、運動情報に変わり、筋肉に送られた結果、お金を投入してボタンを押すという行動ができるのです。私たち人間は、こうした知覚から認識、運動までの一連の情報処理を瞬時に行い、しかも、常に新しい情報に更新しながらそのプロセスを繰り返すことで、違和感のないスムーズな動きができるのです。
実験心理学は、人間らしさを探るひとつの手段
実験心理学では、こうした知覚-認知-運動の一連の現象を取り上げ、それらの情報処理メカニズムの機能的特徴を、実験を通じて解明します。例えば、人間の行動には、経験や学習、習慣などが無意識に影響していますが、そうしたことも実験を行うことで見えてきます。
実験心理学により、知覚と身体の動きとの関連を示すデータを豊富に集め、それをロボット制御に応用すれば、より人間に近い自然で巧みな動きができるロボットを開発することもできるでしょう。つまり、実験心理学は、「人間らしさとは何か」を考えるためのひとつの方法だと言えます。
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