講義No.10760 機械工学

鉄道車両の運動シミュレーションと研究への応用

鉄道車両の運動シミュレーションと研究への応用

鉄道車両の運動シミュレーションとは

鉄道車両には安全運行や快適な乗り心地、さらなる高速化が求められており、これらの性能向上の課題は今後の未来で尽きません。さまざまな項目の改善や課題を克服する際に、鉄道車両の運動シミュレーションが役立ちます。運動シミュレーションとは、コンピューター上に精密な車両を作り出し、レールの上を走らせて、いろいろな機構の動きや部品の負担力、車体の振動を計算する技術です。正確なシミュレーションを実現するには数学の知識、物理の力学に関する知識が役立ちます。また、コンピューターを使うのでプログラミングに関する知識も必要となります。シミュレーションを使うと、膨大な繰り返し走行や、計測の難しい場所を把握できるなど、実物を用いた実験ではできない検討をおこなえます。

鉄道車両の曲線通過の課題

鉄道車両は鉄車輪が鉄レールの上を走るという特徴があります。自動車に比べると高速走行が得意で、多数の乗客を一度に運べます。しかし、自動車に比べると曲線(カーブ)走行がやや苦手であり、特に急な曲線では車輪とレールの騒音が大きくなり、摩耗も進みます。そのような曲線通過における鉄道車両の課題を解決するために、曲線を曲がりやすくする機構を取り入れた操舵台車の研究や、摩耗しにくい車輪形状に関する研究が行われています。

鉄道車両のモニタリング技術

通常の鉄道車両は、決められた時期や走行距離に達した時点で検査や部品取替えがなされています。しかしこの方法では、まだ使える部品を取り換えることもあり、コストもかさみます。そこで、近年では車両の状態に応じてメンテナンスするコンディション・ベースド・メンテナンス(CBM)が検討されています。鉄道車両にセンサを取り付け、車両自身が自分の健康状態を把握するシステムです。問題の種を早期に検知できれば、今まで以上に安全性も高まります。人間に例えるならば、毎日精密な健康診断をしていることに相当します。医療診断の技術や、ロボットのセンサ技術も鉄道車両の発展に役立っています。

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先生情報 / 大学情報

茨城大学 工学部 機械システム工学科 教授 道辻 洋平 先生

茨城大学 工学部 機械システム工学科 教授 道辻 洋平 先生

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機械力学、機構学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校生のとき、三角関数を勉強しても何に役立つのかよくわからないかもしれません。実際には、三角関数は鉄道車両などの乗り物の「振動現象」を理解するために必須です。振動を理解できれば、それを抑えるダンパーをうまく設計でき、乗り心地の良い車両をつくれます。これは一例ですが、高校の勉強を身につけておくと、あなたが将来やりたいことが定まった時に必ず役に立ちます。特に工学の場合、まずは数学と物理の基礎を理解しておくことが大切です。また、将来研究や開発をする場合、海外の情報を把握するために英語が必要です。

先生への質問

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茨城大学に関心を持ったあなたは

茨城大学は、人文社会、教育、理、工、農の5学部からなる中堅的地方総合大学です。校地は水戸・日立・阿見の3地区に分かれており、各キャンパスとも学生を中心とした環境づくりを進め、教育研究施設の充実を図っています。幅広い教養教育と高度の専門教育により専門家として自立できる人材を育成するため、学部・大学院にて多様な学習の場を用意し、各分野で世界を先導する研究活動を推進しています。