発達障害のある児童生徒をICTの力で支える
発達障害の児童生徒の支援
2022年の文科省の調査報告によると、発達障害などで特別な支援を必要とする児童生徒の割合は約8.8%に及んでいます。支援が不足した場合、時間の経過とともに状態が悪化し、二次障害として不登校や登校しぶり、さらに深刻症状につながるケースも少なくありません。早期に適切な支援を開始することが必要とされています。
発達障害の児童生徒の支援には特有の難しさがあります。症状がそれぞれ異なるうえに、発達とともに大きく変化してしまうため、状態の把握が困難であり対策も一律にはいかないからです。個々の症状を見極め、それに応じて支援することが必要です。
個人特性に応じた教育や情報共有の支援システム
児童生徒が抱えている問題に対して、対処方法が分からないケースも多々あります。本人を取り巻く支援者間で情報共有を密に進めるためのICT個別教育支援システムが開発されています。厳重なセキュリティ管理体制のもと、いつでも手軽に入力でき、情報共有が可能です。日々の成長を確認でき、小学校から中学校への進学といった移行支援にも役に立ちます。全国各地で実証実験が進められ実用化も予定されています。
このシステムを用いて個人の状態を定量的に把握・記録して、支援者が支援プランを立て、AIが補助することもできます。得意なことをより伸ばし、苦手なことを強化することも重要であり、発話や表情のトレーニングツールなど、支援の実践に生かせる様々な支援機器が研究開発されています。
ICTやIoTで幅が広がる福祉工学
福祉工学の分野では、電動車椅子や電動義手、高齢者の見守りなどの研究も進められています。例えば独居高齢者の見守りでは、自宅内での部屋間の移動、就寝時の寝返り・体温などを計測し、危険があれば家族などに通知したり、電気毛布の温度を自動的に調整したりするシステムが開発されています。ICTやIoTの発達により、福祉の分野に工学ができることが広がりました。社会課題の解決への扉はたくさん開いているのです。
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福井大学 工学部 機械・システム工学科 准教授 小越 康宏 先生
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