めざせ! 下水処理場のカーボンニュートラル
下水処理には多くのエネルギーが必要
人間の産業活動や生活において必ず発生するのが、大量の廃棄物や排水です。これらを処理する施設の1つに下水処理場があります。地下に埋めてある下水道管で運ばれた汚水は、環境に負荷を与えないように下水処理場できれいに処理され川や海へ放流されていますが、施設を稼働するためには多くのエネルギーを要します。温室効果ガスの発生を抑止するためにも、省エネかつ効率的に下水を浄化する技術開発が必要とされており、さらに下水処理場からエネルギーを回収しようという動きが進んでいます。
下水汚泥からエネルギーを回収できる!
下水には多くの有機物が含まれています。処理場で下水はタンクに集められ、有機物をエネルギー源とするさまざまな微生物によって分解されています。その過程で「下水汚泥」が発生します。たまり続ける下水汚泥を分解して減らす方法として、酸素がなくても活動できる嫌気性微生物を活用したメタン発酵(嫌気性消化)が行われていましたが、汚泥の分解に伴ってバイオガスを取り出すこともできます。バイオガスはボイラーや発電などに利活用することができるエネルギー資源です。しかし、汚泥排出量が少ない小規模施設でのメタン発酵の導入は難しいという現状もあります。周辺地域から生ごみや家畜のふん尿などのバイオマス資源を集め、汚泥に混ぜて処理する方法など、地域性を考慮した取り組みが普及のカギを握っています。
カーボンニュートラルなバイオガスに期待
バイオガスの主成分は温室効果ガスとして排出削減が求められているメタンとCO₂です。ただし、バイオガスは化石燃料を由来としないカーボンニュートラルなエネルギーと捉えられており、メタン発酵でエネルギーを生み出すバイオガスプラントも増えています。全国の多くの下水処理場においても、メタン発酵システムの導入によるバイオガスを活用して、処理場内のエネルギーを自給していくことが期待されています。
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東北工業大学 工学部 都市マネジメント学科 准教授 北條 俊昌 先生
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