ドラえもんのエネルギーは微生物が作る?
電気じゃなくて、ご飯を食べて動くロボット?
今、実用化されているロボットのエネルギーは電気です。例えば二足歩行ロボットの「アシモ」は、背中のバッテリーに充電して動いています。ところが、「ドラえもん」は、ドラ焼き好きですし、人間と同じ食事をしています。「マンガの中のことだから」と笑うと思いますが、いずれは人間と同じ食べ物をエネルギーにして動くロボットが実現するかもしれません。その名も「ガスト(胃)ロボット」、このようなロボットはどうすればつくれるのでしょうか。
胃の中に微生物電池が組み込まれている
人間は、ごはんを食べて、体内で分解してエネルギーを得ますが、この際に電子が発生するのです。この電子は細胞内を流れて呼吸により取り込んだ酸素に渡され、この際に電池の原理でエネルギーが発生するのです。したがって、人間は酸素がないとエネルギーが得られません。ところが微生物の中には、この電子を酸素に渡すのではなく、細胞の外に電流として流しだすことができるものがおり、電流生成菌と呼ばれています。電流生成菌を組み込んだ微生物電池を“胃”として使えば、ガストロボットが現実のものになると考えられます。
田んぼで発電もできる
電流生成菌は、田んぼの土の中にもいます。そこで、田んぼで発電しようという試みも行われています。田んぼの土の中に電極を設置すると、電流生成菌がくっつき、稲の根から出てくる有機物を分解して電流を流しだします。1グラムの土には、1億匹以上の微生物が住んでいると言われています。この中には、未知の電流生成菌が無数にいるようです。
さらに、微生物電池を用いて、生ごみなどの廃棄物や下水から発電しようとする研究も行われています。微生物電池の利用はさまざま、あなたのまわりで微生物電池が活躍するようになれば、電力問題が解決されるかもしれません。
微生物電池の研究はバイオテクノロジーのひとつですが、生物と物理と化学がいっしょになったような面白い学問なのです。
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東京薬科大学 生命科学部 応用生命科学科 教授 渡邉 一哉 先生
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