ロボットの感覚をデジタル化すると、世界が変わる
皮膚感覚や動きのデジタル化
日々進化を続けるロボットですが、人間と比べたときの弱点は「触覚」技術の開発が遅れていることだとされています。VR(仮想現実)のように、映像や音声などは高度にデジタル化されていますが、例えば手術支援のロボットアームでも、指先の感触そのものは医師にわからないのです。ロボットアームなどが触覚を感知してコンピュータへ伝える技術は、日本でも先端の研究が行われており、いかに高感度のセンサを小型化でき、高速度で反応を伝えられるデバイスを開発するかが競われています。触覚のセンサとして使う独自の半導体チップは、専門的には「MEMS・LSI集積化触覚センサデバイス」と言います。
人を癒やしてくれる技術にもなる
将来、人間とロボットが共に安全に働いたり、ロボットが高齢者を介護したりするケースは確実に増えていきます。そのためにも、ロボットの指先だけでなく、腕や身体全体に繊細で全方位的な触覚センサを装着できれば、さまざまな分野で普及し、社会は大きく変わるでしょう。それは直接的な介護支援だけでなく、例えば家族として過ごしたペットが死んだ後、いつも手で触れていたふわふわの毛並やぬくもりの感覚が再現できるとしたら、ペットロスから立ち直るサポートにもなるはずです。
福祉分野で役立つ、触覚のあるロボット
高齢化がどんどん進む社会にあって、最後まで在宅で自律的な生活を送ることが、介護される側にもする側にも求められています。家族に迷惑をかけたくないと考える人も多い一方、介護の担い手は足りていません。触覚を備えたロボットとAIが普及していけば、ロボットアームや歩行補助ロボットとして装着することで、要介護者のQOLは向上するでしょう。部屋のドアを開け閉めする動作ですら、触覚がないと困難なのです。物の表面温度や質感の違い、方向まで瞬時に判断できる触覚を備えたAIロボットの開発は、人命にかかわる高度なレベルが必要な福祉分野でも役立つことが期待されています。
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