日本のCO₂排出の4割は建物から出ている

日本のCO₂排出の4割は建物から出ている

家庭で一番エネルギーを消費しているものは?

あなたの家で、最もエネルギーを消費しているものは何だと思いますか? 答えは「給湯」で、全体の3割を占めています。「冷房」と答える人が多いのですが、年間消費は数%にすぎません。日本のCO₂排出の4割は、実は建物から出ているのです。その半分が住宅からで、半分がオフィスからです。そのうち、建物を建てるときの負荷は1~2割程度、残りは建てたあとに生じています。しかし多くの人は、そういったことを知りません。まずは正しい知識を身につけ、自分の行動が環境にどのような負荷を生じさせているのかを意識していく必要があります。

建物の真の評価には建築後の調査が必要

住宅にはそこに住む人の嗜好(しこう)が影響しますが、オフィスはパブリック空間ですから、快適さや省エネのために何らかの基準を設けるのは意味のあることです。そのためには、ビル内の温度・湿度・照度やCO₂濃度の計測、照明や空調機器のエネルギー消費、外部からの日射や気温などを調べる必要があります。建物を評価する基準である性能評価は、あくまで設計段階のものでしかありません。実際は建物が建ったあとの実態を調査して、想定した性能が出ていなければ原因を探って、それに近づけていく必要があるのです。

海外での国際貢献が業界に風穴を開ける

しかし、そのような調査はあまり行われていないのが実状です。ビルがもたらす環境への負荷は、本来であればオーナーが責任を持って対処すべきですが、いまのところ規制する基準も明確でなく、責任の所在もあいまいです。また管理する側にとってもメリットが感じられないと話は進みません。日本の優れた建築技術をもっと環境やエネルギー問題に生かすためには、これからは国内だけに目を向けるのではなく、海外での国際貢献も視野に入れて考えるべきでしょう。海外で実績を上げることは、業界の閉塞的な状況に風穴を開けるチャンスにもなるのです。

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東京都立大学 都市環境学部 建築学科 准教授 一ノ瀬 雅之 先生

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都市環境科学

メッセージ

大学は、一方的に教わる場ではなく、学ぶきっかけが提供される場です。経験や知識を身につけることで、自分の夢に向かって学びを深めていってほしいと思います。
高校時代は、語学、数学、歴史、社会、サイエンスなどの学習を通じて、「基礎体力」を養う時期だと言えるでしょう。私の研究室にはアジアからの留学生もいて、ゼミや大学院では半分以上、英語で講義をしています。これからは、インプットは日本語でも、アウトプットは英語が必須です。学生たちにも積極的に海外へ出ていくことを勧めています。

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。