韓国文化に息づくシャーマニズム信仰

韓国文化に息づくシャーマニズム信仰

韓国文化の中のシャーマニズム

シャーマニズムとは、病気や人々の悩みに対応する、特殊な能力をもったシャーマンと呼ばれる宗教者と、シャーマンを中心に織りなされる宗教文化の総称です。韓国では、「巫俗(ふぞく、ムソク)」と呼ばれるシャーマニズム信仰が文化に根付いており、仏教やキリスト教が伝来する以前から、ムーダンと呼ばれる宗教者による巫俗文化が存在していました。韓国における巫俗は一般社会との距離感が近く、ムーダンの儀礼は重要文化財にも指定されています。また、巫俗はさまざまな韓国ドラマでも登場するなど、韓国人にとってはとても身近なものとなっています。

シャーマンは身近なカウンセラー

日本では明治時代以前、神道と仏教の区別は明確にされていませんでしたが、明治政府の神仏分離政策などによって、神道とそれ以外の信仰が対置され、それぞれ独立した「宗教」という言葉が一般化していきました。しかし、現代でも多くの日本人が神道や仏教、キリスト教の信者という意識はなくても、神社に初詣に行き、お寺に墓参りに行き、クリスマスを祝います。こうした日本人の宗教行動と近い感覚で、韓国ではムーダンが日常生活に寄り添っています。例えば、熱心なキリスト教の信者でも、人間の努力ではどうすることもできない悩みが生まれると、ムーダンのもとを訪れ、占いなどをしてもらうことがあります。今でいうカウンセラーに近い役割をムーダンが担ってきたのです。

「迷信」から「文化」へ

近代以降の日本では、シャーマンの占いやアドバイスは「迷信」と片付けられるようになっていきました。しかし、近年その文化としての価値が見直され、津軽のイタコの習俗は無形の民俗文化財に指定されています。同様に、韓国でも1960年以降は巫俗が文化財として扱われ始めました。この変化をもたらしたものは何だったのでしょうか。韓国文化を理解するには、時代の流れの中で、巫俗に対する人々の認識がどう変化し、韓国社会の中でどう扱われてきたかについての、中立的な立場からの調査が欠かせません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

長崎外国語大学 外国語学部 国際コミュニケーション学科 准教授 新里 喜宣 先生

長崎外国語大学 外国語学部 国際コミュニケーション学科 准教授 新里 喜宣 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

宗教学、民俗学、文化人類学、韓国語

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたが言語に興味を持ち進学を検討する場合、まずは国語と英語をしっかりと学びましょう。他国の文化に触れるとき、話者のバックボーンは重要です。そこがしっかりしていないと外国語の習得は難しくなってきます。
自国語・他国語を問わず、言語はやればやるほど成果が見える学問です。国語もたくさん勉強すれば良い文章が書けるようになりますし、英語もいろいろな国の人と話せるようになります。それは他の外国語も同様です。学べば学ぶほどそれだけ成長がわかりやすく、また自分の見識も大きく広がります。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

長崎外国語大学に関心を持ったあなたは

長崎外国語大学では韓国語はもちろん、英語、ドイツ語、フランス語、中国語を学ぶことができます。語学の習得には当然、語学そのものの知識が必要ですが、それと同時にその言葉の背景にある文化や習慣を知ることが重要です。それを知ってこそ円滑にコミュニケーションができ、その国の歴史や文化を尊重できるようになります。「世界がキャンパス・キャンパスが世界」をスローガンに多くの学生が海外留学を経験し、また外国から留学生を多く受け入れている長崎外国語大学でグローバルな視野と教養、卓越した語学力を身に付けてください。