宇宙の目と地上の目で災害やインフラを監視する!
リモートセンシングで地表を計測
リモートセンシングの技術は、地球のさまざまな動態解析に活用されています。合成開口レーダー(SAR)はレーダーを使ったイメージング技術で、移動しながら電波を繰り返し送受信して画像を作成します。自ら電波を送るので夜間や悪天候でも画像を取得できるのが特徴です。また地表までの距離の計測が可能で、同じ地点の画像を再度取得するまでに地表に変化があれば、その変位を数ミリ単位で面として計測できます。SARを使った災害・インフラの監視技術の開発・実装が進められています。
災害を早期に検知
SARで地表のわずかな変位を計測すれば、地滑りなどを早期に検知して警戒情報を発することが可能です。もっとも、衛星のSARは宇宙からの広範囲な観測が可能である一方、地球を周回していることから同じ地点を再び観測するまでに12日ほどかかり、リアルタイムでの変位計測ができません。
そこで研究されているのが地上設置型SAR(GB-SAR)です。レール上をセンサが移動しながら電波の送受信を繰り返して画像を作成するもので、仕組みは衛星SARと同じですが、約10秒の間隔で画像を更新できるためほぼリアルタイムで地表の変位を検出できます。GB-SARは、熊本地震で崩れた斜面の復旧工事において、二次的な地滑りの早期検知システムとして実装されました。
インフラ監視にも活躍
また、インフラの点検にSARを応用して、橋などの振動を観測して異常を検知する研究が進められています。振動の観測には非常に短い間隔での計測が必要です。そこで、レール上をセンサが移動するのではなく、あらかじめ分散させて配置しておいた送信・受信のアンテナを電気的に切り替えるMIMO型のSARが開発されて、1ミリ秒ごとの画像取得が可能になりました。
さらに、地上設置型よりも広い範囲を準リアルタイムで観測できるドローンSARも開発されており、これらを組み合わせた複合的なレーダー観測網の構築が目標とされています。
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